2021-04-14

三井住友海上火災保険・舩曵真一郎社長「損害保険の本質である社会課題の解決に向け、デジタル技術を活用していく」

舩曵真一郎・三井住友海上火災保険社長



大学との連携で社員専用プログラム設置


 ── 今、社内にはどういう言葉で呼びかけていますか。

 舩曵 課題を見つけて解決していく、イノベーションの気持ちを強く持っていこうと言っています。言葉としては「未来に渡って世界のリスク、課題解決をリードする、イノベーション企業を目指していこう」ということです。

 この意味するところは、例えばデジタルを専門に取り組む部署や、そのメンバーだけがイノベーションを起こすのではなく、社員全員がイノベートになることに最も価値があるということです。

 社会貢献は、社員1人ひとりの意思が集まって、初めて大きな価値を生みますから、会社任せ、他人任せにできることではありません。社員全員がイノベーティブに仕事ができるようになるために、どういう体制をつくるかが、会社として努力すべきことになります。

 ── 具合的にはどのように取り組んでいますか。

 舩曵 これまでも研修の充実を図ってきましたが、18年から東洋大学情報連携学部(INIAD)と提携し、当社専用の研修プログラム「MS&ADデジタルアカデミー」を創設しました。これはINIAD学部長の坂村健さんのご尽力があって実現したものです。

 また、20年には日本電産会長の永守重信さんが理事長を務める、京都先端科学大学にも社員専用のプログラム「MS&ADデジタルカレッジfrom京都」を開設してもらっています。

 ── 実際の受講した社員の様子はどうですか。

 舩曵 みんな一生懸命に、教わったことをベースにして新しい仕事をしてくれています。データサイエンティストは一皮剥けましたし、それまで数字に強くなかった社員も、そこからプログラミングの勉強を始め、今では自分の仕事の範囲内でプログラミングを活用しています。

 社長内定の記者会見を開催した日は年に1度、社員からCSV(Creating Shared Value =共通価値の創造)をDXで実現するチャレンジプログラムで提案を受け付ける日だったんです。

 会見の前日までに1600件、会見の日には400件、合計2000件の応募がありました。やはり社員はCSVに参加したい、DXを活用してイノベーティブな仕事がしたいという熱い気持ちがあるのだと実感しました。

 会社はその気持ちを実現できるような場をつくり、サポートするための体制をつくることが重要だと思います。

どうすれば社会の役に立てるのか?


 ── 改めて、大学を卒業した際に旧住友海上火災保険を志望した理由を聞かせて下さい。

 舩曵 どういう仕事をしたら、どういうやり方をしたら自分は社会のお役に立てるんだろうか? ということを考えていたのですが、なかなか答えが見つかりませんでした。

 そんな時に損害保険に出会って、この会社に入れば、その仕事自体で社会に貢献できるのではないかと考えました。

 今、若い人たちは当時の私よりも真剣に、いかに社会に貢献できるかを考えています。当社に対しても、そうしたことを期待してくれているのであれば、会社はその期待を受け止め、応えなくてはなりませんから、非常に責任感を感じています。

 ── これまでに印象に残った仕事は何ですか。

 舩曵 入社して間もなく、大阪で「食博覧会・大阪」というイベントが開催されました。食のイベントでは食中毒などのリスクも考えられると思って、飛び込みで営業に行ったんです。

 すると事務局の方々は「兄ちゃん、ええなあ」と言ってくれて、仕事を取るためにはこういう観点を盛り込まないとコンペに勝てないから、努力した方がいいんじゃないかといったアドバイスをしてくれたんです。

 結果的に当社がコンペで勝つことができました。住友海上という看板がありましたし、先輩が裏でサポートしてくれたのかもしれませんが、契約した後に事務局の方が「我々の要望にきちんと応えてくると思わなかった。初心に返ったよ」と言ってくれた時は嬉しかったですね。

 そして仕事というのは、こういう感じでやっていくんだなという自分の型みたいなものが、この時にできたのではないかと感じています。

 ── 座右の銘は何ですか。

 舩曵 中国の古典『菜根譚』から、人と違うことをやり通す勇気を持つという意味の「群疑に因りて独見を阻むことなかれ」と、井上靖さんの『僧行賀の涙』から、長い道のりの中の、一つのつまずきや失敗でくじけてはいけないという意味で「長途の一躓、なんぞ千里の行いを妨げん」という言葉を大事にしています。

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