2021-04-13

MRT社長・小川智也の「オンライン診療で“医療版MaaS”の実現を」

小川智也 MRT社長



患者が病院に行くのではなく 医師が自宅まで来てくれる…



 同社は日本で初めて2016年から日本初の遠隔診療サービス『オンライン診療ポケットドクター』の提供を開始している。原則、初診は対面診療に限られているため、これは再診(二度目以降の診察)患者向けに使用され、対面診療がなかなか受けることができない離島や遠隔地の診療で利用されてきた。

 小川氏は「開始当時は近隣諸国とあまり変わらないレベルだった。しかし、日本では今も初診か再診かという議論をしているが、その間に、海外ではAI(人工知能)を実装するなどのオンライン診療サービスが一気に進んでしまった」と悔やむ。

 それが昨年4月にコロナ禍における時限的措置として初診からオンライン診療が可能になったことで、同社への問い合わせも急増。当初は『オンライン診療ポケットドクター』を医療機関に無償提供するなどし、昨年11月には新しいアプリケーション『Door.into健康医療相談』のサービス提供を開始した。

 医師はパソコンやスマートフォンからアプリを立ち上げると、患者からの問診や相談を確認することができ、カレンダー機能を開いて予約時間を設定。スマホでやり取りし、仮に受診勧奨が必要だと判断した場合は、医師から患者にその旨を伝え、予約時間になったらビデオ通話ができ、オンライン診療を行う。診療が終わったら、先生と患者さんが話した内容をフィードバックしてメモに残し、お互いに後から内容を確認することができる。また、請求書の画像送付や決済、処方箋の画像送付などもできるようになっている。

 このようにオンライン診療だけでなく、健康相談から受診相談、診療まで一気通貫で完結できるので、医師の負担軽減や業務の効率化に配慮している。

「あくまでも医師の通常業務の負担にならないよう、アプリはシンプルに使いやすいように開発した。本当は治療に行かなきゃいけないのに面倒くさくて病院に行かなかった人や薬をもらっても飲まない人はいる。でも、オンライン診療があれば、それを予防し、社会的損失を軽減することができるし、患者さんにとってはコロナの感染予防になるし、医師の働き方改革にもつながるのではないか」(小川氏)

 夢は大きく、将来的に小川氏が考えているのが、特区を活用した“医療版MaaS(移動手段のサービス化)”の実現だ。

 例えば、車で過疎地に行けば車がそのまま総合病院になるというサービス。スマホがあればオンライン診療ができるので、同社が持つ1万2千の医療機関ネットワークを活用し、ポンと画面を押したら内科の先生、ポンと押したら小児科の先生、産婦人科の先生といった感じで、スマホ1つで仮想の総合病院ができる。

「将来的に自動運転で車が走れるようになると、どんな場所でも車が勝手にやってきて、そこにオンライン診療をのっけることで医療サービスを受けることができると。だから患者が病院に行くのではなく、医師が普段から住み慣れた患者の自宅まで来てくれる。そうなると人々の生活スタイルもいろいろ変わってくるのではないか。アプリの開発1つで治療や診断、医療のあり方が一気に変わってくると思う」と語る小川氏。

 現状ではこのような話はまだまだ夢物語。だが、ICT(情報通信技術)を活用すれば、こういう世界が実現できるところまで来ている。医療の世界はまだまだICT化が進んでいない部分も多い。そこに企業が参入する意義があるのだろう。

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