2021-04-12

【患者主体の医療を実現へ】 データの利活用で病院経営の改善促すメディカル・データ・ビジョン

岩崎博之 メディカル・データ・ビジョン社長



データを持っている患者向けオンライン診療サービスを



 同社にとって追い風となっているのが、昨年4月から時限的に解禁されたオンライン診療。これまで病院に行って医師と患者が対面で診療することが当たり前だった光景が、パソコンなどのITツールを活用することで診察や薬の処方を受けることができるようになった。

 医療現場でのコロナ感染を防ぐため、これまで受診歴のない“初診患者”に対してもオンライン診療を認めることになったのだが、岩崎氏は「オンライン診療の可能性は非常に大きいが、現状ではオンライン診療はほぼ使われていない」という。

 実際、同社がアンケートをとったところ、病院の8割強はオンライン診療に後ろ向き。何の情報も持っていない初めての患者に対し、医師として責任ある診断ができるとは思えないという意見が多かったそうだ。

 そこで岩崎氏が考えているのが、健診データとの連携。企業では定期健診が義務付けられているため、この健診データがあれば初診でもある程度の疾患を予測できるため、医師の負担を減らすことができるからだ。そのため、昨年10月に健診システムなどの開発を行うシステムビィー・アルファを買収した。

 また、 昨年11月にはSBIホールディングスと資本業務提携。近年、SBIは地方銀行との連携を深めており、今後は金融機関や自治体とも連携し、MDVが持つ医療データを合わせることで地域医療の活性化を目指している。

「われわれが目指すのは、医師に接続するのは必ずデータを持っている患者、持っていない患者は接続しないというオンライン診療サービス。自らの医療情報を自分で持つことができれば、医師から診断された時に、先生に言われるがままではなく、こっちの治療方法ではなく別になりませんかと意見ができるようになる。そうすることで患者は納得して医師の治療を受けることができるし、医師への信頼も増す。データを個人で持つことの意味は、医師任せではなく、患者主体の医療を実現することにある」と語る岩崎氏。

 期待が高いオンライン診療だが、まだまだ規制の壁や慎重な医師が多いのも事実。超えるべき壁はまだまだ高いが、岩崎氏の挑戦はこれからも続く。

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