2021-04-11

【倉本聰:富良野風話】優先課題

国会で論じられている課題を見ていると、どうも焦ついて仕様がない。本当の意味での国の最重要課題が忘れられ、汚職とか政治家のスキャンダルとか、何か週刊誌的次元の課題ばかりが主流になってしまっている気がする。では今、この国、日本にとっての最優先課題とはどんなものなのだろう。思いつくままに列挙してみる。

◆核のゴミ処理問題。核燃料に依存しながら、いつになっても結論は先送り。これは断じてよろしくない。

◆安楽死、もしくは尊厳死の問題。今や胃カメラを飲むのにさえ、意識をとばせる技術を持つ医学が、人命最優先という思想に縛られて苦痛からの解放を未だにタブーの領域に閉じこめてしまっている。

◆国の借金問題。何兆、何百兆円という、どんどんかさむ国の借金は、誰がどうやって返すのか。返済方法をしっかり出して欲しい。

◆食料自給率37%の日本。世界の人口増を見るとき、この先、気候変動による世界の食料絶対生産量が落ちた時、世界は、日本はどうなるのか。自給率1%の東京に集った日本の頭脳はどう考えているのか。頭脳だけで食えると本気でお考えになっているのか。

◆スマホ・パソコン問題。小中学生にまでパソコン教育が進められ、一方それに相応する倫理教育がなされないから、人間はどんどん性悪への道を歩み、匿名という卑怯な手段によって中傷・誹謗の潮流を生み出す。個人の自由という変てこな哲学が、その風潮をどんどん助長する。これをこのまま放っといて良いのか。

◆日本の人口の減少と親捨て、故郷捨ての社会風潮が家族の崩壊を当たり前にし、地方消滅を現実化し、田舎は既に限界集落・空き家集落の山。その土地をまた愛国心なき不動産屋が外国資本にどんどん売るから日本の領土はぐんぐん減っている。このことに国も政治家も何も言わない。これで良いのか。更にこの事態は医学の進歩も加わって孤独老人を激増させ、孤独死の問題へと発展する。こういう状態を放置して良いのか。

 考えて行けば重要優先課題は、まだまだ山とある。だがその重要な議題の数々が国会の場で論じられているのを残念ながら僕は見ていない。それとも僕が見逃したのだろうか。

 大体、議員の数が多すぎる。きけばあの大国アメリカよりも多いというからおどろく。そのそれぞれが歳費をもらい、交通費をもらい、事務費までもらうというのだから、一度やったら止められないのだろう。国会が本当にこれで良いのかという問題。これも優先議題に入るかもしれない。良識の府といわれる参議院の良識を残念ながら僕はまだ見ていない気がするし、参議院議員がどういう役に立っているのかよく判らない。

 ともかく論題がずれている気がする。今少し身近で大切なこと、日本の将来に関わることを論じて欲しい。忖度や桜はもう飽きた。優先課題がもっとあるはずだ。

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