2021-04-08

ルネサスの工場が火災 自動車各社は“泣きっ面に蜂”

柴田英利・ルネサスエレクトロニクス社長

経済安全保障を含めて、半導体のサプライチェーン(供給網)をどう構築するか──。

「全力を投じ、何とか1カ月以内での生産再開にたどり着きたい」と語るのは、半導体大手・ルネサスエレクトロニクス社長の柴田英利氏。

 ルネサスの主力工場・那珂工場(茨城県ひたちなか市)で発生した火災事故が、自動車メーカー各社の頭を悩ませている。
同社は「マイコン」と呼ばれる自動車の走行を制御する半導体で世界シェア約2割を誇る巨大メーカー。ただでさえ、足元では自動車向けの半導体が世界的に不足しており、自動車メーカーにとっては更なる減産を余儀なくされる公算が大きい。

 3月19日の未明に発生した火災事故。火災のあった生産棟は最先端の半導体を製造していた。同社の説明によると、めっき装置が出火元となり600平方㍍を焼失。純水供給装置や空調装置などの設備や装置に被害が出ており、業界内では生産再開までに「数カ月はかかるのではないか」(電機業界関係者)との声も出ている。

 昨年から世界中で続く半導体不足。これは1年前の新型コロナウイルス感染症の拡大によって、自動車各社が一斉に生産調整に入った。半導体メーカーは自動車向けの半導体が落ち込んだ分を、リモート需要で急拡大したパソコン向けの増産でカバーした。ところが、昨秋あたりから中国を中心に自動車の需要が回復。このため、自動車向けの需要が拡大しても、納品できない状態に陥っている。

 こうした状態から、ルネサスも半導体をフル生産しようと、台湾積体電路製造(TSMC)への委託していた分の一部を自社生産に切り替えるなどして対応していたが、その生産棟が今回火災にあってしまった。

 すでに半導体不足の影響で、日産自動車は2020年度の販売台数の見通しを約15 万台、ホンダも10万台引き下げた。トヨタ自動車は数千台で落ち着く見通しだが、自動車業界では「よりによって何でこの時期に火災が……」という声も上がる。

 自動車各社にとっては、まさに“泣きっ面に蜂”。ルネサスの工場の生産停止が長引けば、自動車各社への悪影響もさらに増しそうだ。

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