2021-04-04

【コロナ危機下の不動産経営】賃貸借における敷金のお話

(貸しビル事業者Q.)弊社は、A社に飲食店舗としてビルの1階を賃貸していましたが、今般、A社は「コロナ禍での経営難のため退去するので、B社に賃借権を譲り渡したい」と申し入れてきましたので、弊社はこれを承諾しました。しかし、A社から受けていた敷金はB社
に引き継がれるのかと思っていたところ、A社から「敷金を返還してくれ」との請求を受けました。返還しなければならないでしょうか。

(弁護士A.) 昨今コロナ禍のもと、貸しビルからテナントが離れていく現象が目立つようですが、敷金はどうなるでしょうか。

 敷金とは、名目を問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づき生じる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭です。そして、敷金は、一定の場合に、未払の賃料債務の他に契約終了後明渡しまでの賃料相当損害金、賃借人の原状回復債務、用法違反による損害賠償債務などあれば、賃貸人は、これらの額を控除した残額を賃借人に返還します。

 では敷金はいつ返還されるのでしょうか。この点は、賃貸借契約が終了して物件の返還・明渡しがされたときが典型ですが、賃借人が賃貸人の承諾を得て賃借権を他に譲渡したときも返還されます。

 このことは、これまでの最高裁判例(最高裁昭和53年12月22日第二小法廷判決)で示されていたことですが、昨年令和2年4月1日から施行された改正民法(第622条の2)で、旧民法には定めのなかった敷金の定義や敷金の返還時期などが前記のように定められました。

 そこで、貴社のケースでは、賃借人AがBに賃借権を譲渡し、賃貸人である貴社はこれを承諾していますので、貴社は、敷金を差し入れたAに敷金を(Aの債務額を控除した後に)返還しなければなりません。

 この点は、Aの貴社への敷金返還請求権につき、AとBとが特別に合意して、Bがこれを引き継ぐことも法的には可能です。その場合は、その旨貴社に通知しておけばよいでしょう。しかし、そうした特段の合意などない限りは、敷金返還請求の権利は新賃借人BがAから引き継ぐものではありません。賃借人がチェンジした場合は、特段の合意のない限り、敷金の権利は新賃借人には引き継がれません。なお余談ですが、賃貸人がチェンジした場合は、敷金は担保ですので新賃貸人に引き継がれます。

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