2021-03-31

通信事業が価格競争に入る中 法人事業を伸ばす! ソフトバンク流”新規事業育成”法

2020年4月ソフトバンクが設置した「会津若松デジタルトランスフォーメーションセンター」

まず走り出す〝ソフトバンク流〟

「ソフトバンク流になるが、新領域をやるということは明確に決まっていた。ただ、何をするかハッキリしたものがあるわけではなく、チャレンジするという志だけ、というのが実態だった」

 ただ、思いとしてあったのは「二足のわらじではなく、この領域で真っ向から戦っていくチームを作りたいということ。そこで優秀な人材を社内から集め、120人体制でスタートした」。

 河西氏が〝ソフトバンク流〟と表現したのは、まだ1銭も稼いでいない、何をするかも決まっていない部署に優秀な人材120人投入するという経営層の意思決定。

 だが「ソフトバンクは新規事業開発が得意なわけではなく、買収を繰り返す中で新しいビジネスモデルを作ることで成長してきた会社」だと河西氏は語る。

 そこで「当初は0から1を生み出そうとしてきたが、組織設立から半年で各業界のリーダーといわれる企業とアセットを持ち寄って『共創』で事業を作っていこうと大きく方向転換した」。

 ミッションも「われわれのアセットやサービスを活用しながら日本の課題に対峙する事業を作り上げていこうと決めた」。

 仕事の仕方も考え方も従来とは異なるため、まず河西氏が注力したのが人材育成。「研修のあり方を0から作り変え、基礎体力を上げていった」。

 そして「新規事業開拓の努力、労力に見合うよう、報酬制度も少しずつ変え」、「新たに『事業開発』という職種を立ち上げて、人事制度にも組み込んだ」。

 こうして戦う集団を作り、現在40弱のプロジェクトが進行中。昨年末時点ですでに15のプロジェクトが事業化している。

 DX本部が〝共創〟プロジェクトとして注力するのが「内需型の事業で就労人口が多いが、DXが進んでいない小売・流通、不動産・建設、サービス・観光、ヘルスケア」の領域。

 日本の課題は最終的にスマートシティに集約されるため、スマートシティプロジェクトを例に見てみると、ソフトバンク本社のある竹芝地区で東急不動産と取り組むプロジェクトがある。

 顔認証でビルのゲートを通るためエレベータに乗ると自分の部署の階に自動で行けたり、人流センサーとAIでエレベータやエアコンを自動制御。また飲食店の混雑状況を店舗に行かずに知ることもできる。

 地方では会津若松市と連携。

 今は防災にしても自治体ごとにシステムが異なり、隣町との連携も取れない状況だが「〝都市OS(オペレーションシステム)〟という機能を作り上げ、標準化されたOSの上で医療・介護、物流、防災、決済、教育などのサービスを立ち上げていこうと考えている。国や自治体の持っているデータとわれわれが持っているデータを活用してより良いサービスを住民に提供していくプロジェクト」だ。

 これが実現すれば、免許を返納したお年寄りが病院へ行く場合、自治体のデータと連携して移動手段を手配したり、本人確認ができるため震災時の避難場所でも適切な医療を提供できる。

 都市OSの実装はこれからだが、子会社・ヘルスケアテクノロジーズを設立し、昨年から『HELPO(ヘルポ)』というオンライン医療相談サービスを開始。LINEやヤフーと連携して様々なサービスを提供すれば、他社にはない付加価値を創出できる。

 国内では巨大グループとなり成長が独占に繋がりかねない状況の中、社会課題解決で地域活性化と自らの成長を図っていく。

 こうした中、LINEユーザーの画像や動画が韓国で保存されていたことで、ZHDは、個人情報の管理のあり方が問われている。

 たとえ法的な問題がなくとも、インフラとしての存在意義が高まる中、グローバル経営とローカル事業のあり方やデータ管理の問題は、ますます重要な課題にもなっている。

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