2021-03-29

ミキハウスグループ代表・木村 皓一の「世界の子供に笑顔と安心を!」(第7回)

きのくに子どもの村学園



『きのくに子どもの村学園』理事長は京都大学教育学部出身で、大阪市立大学教授をつとめた堀真一郎がつとめる。

 木村と堀は、学園設立にあたって徹底して話し合った。2人の教育理念はぴたりと一致し、理想の学園をつくろうと、『きのくに子どもの村学園』設立にこぎつけたという経緯。

 同学園が運営する学校は〝自由学校(フリースクール)〟と呼ばれ、英国のサマーヒル・スクール( Summerhill school、サフォーク州レイストン)が有名。

 サマーヒル・スクールは1921年設立と歴史は古い。創設者のA・S・ニイルは、『子供たちは強制よりも自由を与えることで最もよく学ぶ』という考え方で同スクールを運営。その伝統は今も引き継がれている。

 学校を運営するには、規則やルールが必要だが、新しい決まりを作る際、子供たちも教員と同じ1票の投票権を持って参画。つまり、自分の頭で物事を考え、自分で判断するということで、自己決定の意義を日常生活の中で体得させていくのが自由学校の特長。

 堀は渡英し、サマーヒルの良さを掘り起こしてきた教育者。「木村さん、ものすごく面白い学校ですよ。このような学校を作りたい」と堀は切り出し、自由学校の良さと特長について持論を述べた。

 サマーヒルの教育について、当初、教育レベルは低いといった批判も見られたようだが、卒業生は大学にも進学し、大学教授などの知的な職業に就く者も少なくなかった。

 英サマーヒルの卒業生の大半は、公務員や一般企業などの組織で歯車の一つになるより、自営業や自由業を選ぶものが多いという。

 本当に子供のためになる学校を作ろう─。堀はそのために『きのくに子どもの村学園』の運営に全身全霊をかけて打ち込みたいと情熱を燃やす。

 学園創設に、三起商行は資金面・人材両面でバックアップ。教職免許を持った社員3名を学園に出向させた。その後も継続的に出向させ、中には学園に移籍し、現在、きのくに子どもの村学園中学校の校長を務めるなど、学園の中心人物になっている人物もいる。

 企業がこういう教育面で多額の資金を提供するのには負担も重い。そこで、木村は文部科学省や財務省に陳情し、学校設立のための資金拠出を経費で認めてほしいと訴えた。

 度重なる話し合いの末、政府も学園設立の趣旨を理解し、学園設立にこぎつけたのである。

「政府の関係者の皆さんにも動いてもらい、理解していただき実現できました。だから、『きのくに子どもの村学園』が、あの高野山のところにできたんですよ。廃校を利用してね」と、木村も感慨深げに語る。

 空海が開山した真言宗総本山・金剛峰寺がある高野山。その高野山近くの高野口から山の方へ少し入った場所が『きのくに子どもの村学園』の所在地。

 学校運営にあたっては、『ミキハウス』はあくまでも後方支援という役割。ここでも表に出ず、縁の下の力持ちという役回りに徹している。

(「財界」4月7日号から、敬称略)

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事