2021-03-22

JTBが“中小企業”化 税負担緩和で生き残りを図る

コロナ禍でJTBが進めているオンライン相談

苦境に立つ旅行業界。最大手のJTBが“中小企業”化して生き残りを図ることになった。

「財務基盤の健全化を図る」と関係者は語る。JTBは資本金を現在の23 億400万円から1億円に減資。これにより税制上、中小企業とみなされることとなり、税負担が軽くなるほか、今期発生する損失を補塡するための原資を確保する狙いだ。

 大企業と特に異なるのは地方税である法人事業税。地方税である法人事業税は「外形標準課税」と呼ばれる仕組みを採用しているため、赤字であっても一定程度の税負担が求められる。だが、その対象になるのは資本金1億円超の法人となるため、1億円を下回れば適用されない。

 旅行業界は改善の兆しが見えていない。観光庁によると、JTBの20年12月の旅行取扱高は前年同月比でマイナス41%。他社でも海外旅行が主力のエイチ・アイ・エスが同87%減、KNT―CTホールディングスも同56%減と苦戦が続く。足元では緊急事態宣言が追い打ちをかけており、1月以降はさらに落ち込んでいると見られる。

 JTBの2020年4―9月期は781億円の連結最終赤字に転落。株主資本のうち利益剰余金は20年9月末時点で799億円と、半年でほぼ半減している。21年3月期は過去最大の1000億円程度の経常赤字を見込む。「緊急事態宣言が解除されてもテレワークの普及でビジネス出張の急速な回復は見込めない」(別の旅行会社関係者)

 JTBのように、中小企業になることでキャッシュアウトを抑える動きは出てきている。外食では回転すしのカッパ・クリエイトや居酒屋チムニーなどが1億円への減資を表明。航空業界ではスカイマークやANAセールス、マスコミでは毎日新聞社も1億円に減資する方針を示している。

 JTBはビデオ通話などで旅行先とつなぐ新サービスや学生向けに割引を適用するサービスなどの展開で新たな収益源を模索中だが、単価は安くなる。国内店舗を25%削減するほか、早期退職や採用抑制でグループ全体の社員数を6500人削減する計画を打ち出している。まずはキャッシュアウトを抑える。そのための苦肉の策は他の旅行会社にも広がる可能性がある。

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