2021-03-21

豊田社長が私財を投じるトヨタの実験都市の建設開始

3月23日に鍬入れ式を行ったトヨタ自動車社長の豊田章男氏(左)とウーブン・プラネット・ホールディングスCEOのジェームス・カフナー氏

トヨタ自動車の実験都市「ウーブン・シティー」の建設が始まった。静岡県裾野市にある旧東富士工場の跡地を使ってゼロからつくる街の特性を生かし、かねてより社長の豊田章男氏が掲げていた「モビリティー・カンパニーへの転換」の舞台が整うことになる。

 まずは子育て世帯や高齢者、そして発明家360人が住み、最終的には2000人が暮らす街へと生まれ変わる。トヨタが主導することで最初に開発が進みそうなのが自動運転だ。同社が開発した自動運転の大型電気自動車「eパレット」が必要な時に、必要な場所へ、必要な台数を配車し、待ち時間のない「ジャスト・イン・タイム」な運行が可能になる。

 そのため、道路整備でも自動運転車、歩行者、歩行者とパーソナルモビリティと3種類の道路が敷かれ、地下には物流用の道路が整備される。ゼロからまちづくりをデザインすることで開発の自由度が確保され、人の動きもシミュレーションすることができる。

 これだけの規模のプロジェクトになるだけにトヨタ単独ではなく、資本提携を結んだNTTをはじめとした3000以上の法人・個人が参加する予定。それに加えて「いつまでも未完成」と豊田氏が語るように、実験の成果が出なければ、退去を求める仕組みも検討するなど、街の姿は変化し続ける。

 背景にはトヨタの危機感がある。IT企業をはじめ、電機メーカーや石油会社など異業種から自動車参入への表明が相次ぐ。そのため、トヨタも「クルマをつくって売るという従来のビジネスモデルが通用しなくなる」(関係者)と身構える。同社は移動に関するあらゆるサービスを提供することで収益を上げる新たなビジネスモデルの構築を探っているわけだ。

 このまちづくりへの意気込みは豊田氏の行動からも読み取れる。トヨタは今年1月に子会社で次世代自動車ビジネスの事業基盤を担うウーブン・プラネット・ホールディングスを設立。トヨタが出資することに加えて、豊田氏も創業家として個人で同社に出資しており、同社の事業会社の代表取締役には長男の大輔氏が就任している。

 織機、自動車、住宅など新たな事業を興してきたトヨタ。そのトヨタが100年に一度の大変革期の中で、次なるフルモデルチェンジに動き出している。

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