2021-03-10

スズキ会長の鈴木修氏が退任 軽の発展、インド進出で成長

鈴木 修・スズキ会長

「人間は仕事をしなくなったら死んでしまう。挑戦することが人生だ」──。スズキ会長の鈴木修氏(91)が44年間持ち続けてきた代表権を返上し、相談役に退くことになった。

 日本独自の軽自動車販売で33年間連続の首位を維持し、インドにいち早く進出して約50%のシェアを誇るまでに育て上げた修氏。「生涯現役」を貫いていた同氏が退任を決めたのは、昨年3月の会社創立100周年を迎えたことに加え、新たに策定した中期経営計画の「着実な実行のため」(同)だ。

「中小企業のおやじ」を自認し、「工場の部品1つに至るまで目を光らせる」(関係者)ことで、収益をあげにくい軽自動車や小型車でも高収益をあげる会社へと成長させたカリスマの退任で、スズキは修氏の長男で社長の鈴木俊宏氏(61)を中心に6人の専務役員による合議制で生き残りに挑む形となる。

「修、鈴木家の養子が私を含めて2代で続くことになるから、つぶしちゃいかん」──。創業家である鈴木家の娘婿として1958年に鈴木自動車工業(当時)に入社した修氏は義理の父で2代目社長の鈴木俊三氏からこう言われた。修氏は「預かったものは会社。私の時代につぶすわけにはいかないと責任を感じた」と振り返る。

 生き残りをかけた戦略の1つが提携戦略。米ゼネラル・モーターズ、独フォルクスワーゲンとの資本提携にも踏み切った。それだけスズキの小さなクルマを作る技術が魅力的だったからだ。しかし、修氏は狙った成果が得られないと判断すると解消。そして2019年には自らトヨタ自動車名誉会長の豊田章一郎氏の下を訪れて同社との資本提携を締結。大きな後ろ盾も得た。

 そんな修氏も後継者問題には頭を悩ませた。社長のバトンを渡した戸田昌男氏や後継者として通産省(現経済産業省)から迎え入れた小野浩隆氏が次々と急逝。その度に修氏が社長として再登板していたからだ。しかし、今は俊宏氏の舵取りで安定。

 今後のスズキの課題は電気自動車(EV)を中心に一気に動き出した電動化だ。同社はEVをはじめ、軽自動車でも本格的なハイブ
リッド技術を自前開発することを表明。「軽自動車を守る」と俊宏氏も強調する。

 俊宏氏が名実共にスズキのトップとして会社を引っ張れるかが命運を分けることになる。

【関連記事】ホンダの三部敏宏専務が次期社長 エンジンのエキスパート

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事