2021-03-10

ホンダの三部敏宏専務が次期社長 エンジンのエキスパート

三部 敏宏・ホンダ次期社長

「安定した時代よりも激動の時代が合っている。重責は感じているが、ワクワクもしている」

 4月1日付でホンダの新社長に就任する専務兼本田技術研究所社長の三部敏宏氏(59)はトップ就任への意気込みを語る。現社長の八郷隆弘氏(61)を例外として、ホンダの社長は開発子会社の技研社長が務めるのが既定路線。その意味では、今回の三部氏の昇格はその通例に沿った形となる。

 八郷氏が率いた6年間は「2012年に掲げた600万台体制という拡大路線の修正」(関係者)に費やされた。派生車種の削減をはじめ、狭山工場や英国工場を閉鎖。F1からも撤退し、社内で「聖域」と言われた技研の四輪車の商品開発機能を本社に移管させた。八郷氏も「走り出す準備ができた」と語る。

 その八郷氏が固めた地盤の上に、「ホンダの未来の『建物』を建てる」のが三部氏の役割。広島大学大学院の出身だが、F1のエンジン開発に憧れてホンダに入社し、環境技術の開発に長く従事。過去には有害物質の排出を減らしたエンジンの開発にも成功した「環境対応のエキスパート」(八郷氏)でもある。また、米ゼネラル・モーターズとの提携強化でも中心的な役割を担った。

 ホンダにとって目下の課題は四輪事業の収益向上だ。八郷氏の施した改革が進めば、22年までに生産能力を16年比で約1割削減。25
年までに18年比で1割引き下げることになる。余剰生産能力や品質関連費用が膨らんだことで20年4―12月期の四輪事業の営業利益率は0・8%と低迷。これを底に、今後は上昇するシナリオを描く。

 同時に電動化対応も不可欠。ホンダは30年までに電動車の比率を3分の2にする目標を掲げる。三部氏も「電動化がメインストリームになる」と語り、「単に電気自動車を作れば良いのではない。商品はもちろん、調達戦略や生産戦略、売り方を同時に進めることで初めて商品と事業性を両立できる」と話す。

 最近は「N-BOX」などの軽自動車以外のヒット車を世に出せておらず、「技研と青山(本社)は別会社」(技研関係者)といった現場の意識改革も道半ばだ。「必要があれば他社とのアライアンスも躊躇なく決断する」と語る三部氏。同氏が描く「ホンダらしさ」の中身が問われることになる。

【関連記事】スズキ会長の鈴木修氏が退任 軽の発展、インド進出で成長

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事