2021-03-08

なぜ調味料メーカーが医療・福祉なのか? 大西 壯司・日の出医療福祉グループ代表理事に聞く!

大西 壯司・日の出医療福祉グループ代表理事



コロナによってシニアの二極化が進む



 ─ 当面は新型コロナウイルス感染症との戦いが続いていくわけですが、コロナ禍の影響はいかがですか。

 大西 コロナ対策は本当に大変でして、やはり感染症対策をおろそかにしてはいけないと。われわれは入所系や通所系など、いろいろなサービスがあるわけですが、食事や入浴、排泄など生活介助のレベルを落とさないために、施設外との接触は最低限にとどめています。その上で、入所系については、できるだけ安全・安心を保つということで、空気清浄機などの機械設備を導入し、強酸性水と光触媒による抗ウイルス・抗菌対策の徹底を呼び掛けています。

 もちろん、送迎の車や手すりなど、人が触った箇所には強酸性水を噴霧して除菌するなど、対策をとるようにしています。

 結果的に、日本で新型コロナが発生から1年以上経ちましたが、幸いにして散発的な感染はありましたが、大きなクラスター(集団感染)のようなものは出ていません。

 ─ コロナ禍で大変なご苦労があったと思うんですが、逆にこの1年で何か嬉しかったことはありますか。

 大西 われわれは医療、介護、保育と、様々な事業を展開しておりますので、まずは業績が安定したということですね。
これがやっぱり一番、職員の皆さんにとっても非常に良かったことだと思っております。

 わたしはコロナによって、今後シニア層の二極化が進むと考えています。要するに、高所得なシニアと低所得のシニアに分かれてくると思うんですね。

 高所得の方は株式会社に任せればいいと思うんですが、一方でコロナ難民と言いますか、低所得者層というのは放置しておくと社会不安を惹起する恐れがありますので、こうした事態を回避するためにも、経済弱者のための介護ビジネスが必要にな
ってくると思うんですね。

 われわれはどちらかというと後者に目を向けて、そこに合うような施設展開をやっていくべきだろうと考えています。極端に言いすぎるのもいけませんけれども、例えば、10万円とか、普通の年金の中で何とか生活できるような施設をつくっていくことが福祉法人の大きな役割かなと思います。そういうことに取り組んでいくのが、これからのわれわれの生き残る道かなと思っています。

 ─ 非常に素晴らしい経営理念といいますか、経営の基本姿勢を聞かせていただきました。そうなると、今後も医療や介護の連携というのも、ますます必要になってきますね。

 大西 もちろんです。これから必要なことは、ワンストップ医療、ワンストップ介護というのに取り組んでいかないといけないと思っております。ここで医療が全て終わる、そこで介護が全て終わるという地域づくりと言うんですかね、そういうふうな展開をしていくのが一つの課題かなと思っています。

 ワンストップというのが一つの切り口でして、やはり、われわれは介護だけして、医療はほったらかしというのはダメだと。どちらかだけというのはある意味では難民をつくるということなので、それをちゃんと結びつけてあげるという機能がわれわれの役目かなと思っています。だから、病院を出てきたらどうしようとなった時に、ここの施設で受け入れましょうというふうな、すぐつないであげるということが必要かなと思います。

 ─ キーワードはつなぐということですね。

 大西 はい。つなげてあげたいですよね。高所得者は別としまして、コロナ禍で困っている人は本当に多いです。低所得者の方は知っている人も少ないし、ルートも少ない。そういう人たちに手を差し伸べる仕組みづくりというのが、今後、非常に大切なことだと思います。

おおにし・たけし
1950年生まれ。神戸大学農学部卒業。73年キング醸造入社。76年取締役、82年専務、90年社長、92年社会福祉法人日の出福祉会設立、理事長就任。2010年キング醸造会長。13年退任し、18年まで最高顧問。16年日の出医療福祉グループ設立、グループ代表理事に就任。

(「財界」3月10日号から)

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