2021-03-04

グループ再編は最終章 日立・東原敏昭CEOが取り組む3つの注力分野とは?

東原敏昭・日立製作所社長

上場子会社2社には投資ファンドが関心



「CASE(つながる車、自動運転、シェアリング、電動車)を牽引するグローバルリーダーを目指す。コアな技術を活用し、次世代のソリューションをつくり出し、マーケットリーダーシップを強化できると思う」

 こう語るのは、1月1日付で日立製作所とホンダの傘下にある自動車部品メーカーが経営統合して発足した「日立Astemo」プレジデントCEO(最高経営責任者)のブリス・コッホ氏。

 日立系の日立オートモティブシステムズと、ホンダ系のケーヒン、ショーワ、日信工業が経営統合した日立アステモ。

 同社は日立が66・6%、ホンダが33・4%を出資。自動車・二輪車業界に向けて、両社グループの技術と顧客網を結集し、自動運転に必要な次世代システムやシャシー、次世代モーターサイクルの開発を急ぐ。2021年度の売上収益は約1・6兆円。これを25年度に約2兆円にする計画だ。

 日立のグループ再編が急ピッチで進んでいる。

 日立はリーマンショック後の2009年3月期に当時、製造業最大となる7873億円の最終赤字を計上。ここから従来の総花経営を改め、近年は事業の選択と集中を加速。液晶パネルや半導体など、ボラティリティー(変動率)が高い事業を本体から切り離し、あらゆるものがインターネットにつながるIoTを成長戦略の中核に据え、グループの再編を進めてきた。

 かねてから、社長兼CEO(最高経営責任者)の東原敏昭氏は「IT(情報技術)、OT(制御技術)、プロダクト(製品)の3つを持っている会社は世界的にも珍しい。この3つを融合させた価値提供は、まさに日立の強み」と繰り返す。それらを掛け合わせた〝社会イノベーション事業〟を成長戦略の柱と位置付けている所以だ。

 中でも、同社が注力するのはIoT基盤「ルマーダ」。企業の現場で飛び交う膨大なデータを分析し、不良品の発生防止など業務効率化を支援する取り組み。この事業との親和性のないものは切り離し、相乗効果が見込まれる事業は取り込んできた。

 今回発足した日立アステモも、グループ再編の大きな流れの一つ。CASEに代表されるように、これから自動車業界が電動化すればするほど、IT技術の活用は不可欠。そう考えて自動車部品メーカーの再編に着手したということである。

 日立は昨年、日立化成を売却したのに続き、日立ハイテクノロジーズも完全子会社化。次の焦点となっているのは日立建機と日立金属の上場子会社。日立はすでに2社を売却する方向で調整中。水面下では投資ファンドが関心を示しているようだ。

 あるアナリストは「日立は営業利益率10%を視野に入れ、利益率の低い事業を次々と売却している。御三家の一つ、日立化成(現・昭和電工マテリアルズ)を昭和電工に売却した時点で、他のグループ会社にメスを入れても驚きはない」という。

 連結上場子会社の数は09 年末の22社から日立金属と日立建機の2社まで減少した。日立のグループ再編は最終章に入ったと言っていい。

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