メイド・イン・ジャパンにこだわり続けて50年
「メイド・イン・ジャパンでずっと踏ん張ってきた」──。
高級子供服の『ミキハウス』(MIKI HOUSE)ブランドで知られる三起商行社長の木村皓一は〝日本の良い技術〟にこだわり続けてきた。
1945年(昭和20年)2月23日生まれの木村は26歳で創業。一代で『ミキハウス』を高級子供服ブランドに育て上げた〝立志伝中〟の人。
今年2月の誕生日を迎えると満76歳。創業して50年、「世界中の子供たちの笑顔が、大きく花ひらくように」という思いを持ち続けてきた。
アパレルの同業が中国をはじめ、アジアに生産拠点を求めていったが、木村は創業以来の原点を守り続けた。
「海外の工場から、特に中国などからは何回も話が持ち込まれましたよ。サンプルをもって、うちはこんなに安くできると来てはったけど、それは違うんだと。僕のところは安くつくろうと思って事業をやってきたわけではないと」
質のいいベビー服・子供服をお届けする──。この思いは創業以来、変わっていない。「メイド・イン・ジャパンでいくという方針も、全然変えへん」と木村は関西弁まじりで言う。
「日本のプライドみたいなものがあって、日本の良い技術をみんなに見てほしいと思ってやってきましたからね」
ベビー服・子供服だから、子供を持つ親は何度も洗濯しなければならない。洗濯をしても着崩れしないように、素材の選択にも人一倍気をつかう。そして、子供の柔らかい肌を守る肌着や服に仕立てるには、「日本の衣類づくりの技術が不可欠」という木村の思いである。
ミキハウスは高級子供服ということと併せて、〝安心・安全〟のブランドイメージを定着させてきた。グローバル市場での人気も高い。
コロナ禍にあって潜在力を発揮
そのミキハウスも2020年(令和2年)の前半、世界中を襲ったコロナ危機による打撃を受けた。
ミキハウスの売上高の7割を占めるのは全国の百貨店内にある店舗の売り上げ。全国に直営約120店、海外では15カ国・地域に約75 店を構える。
コロナ危機が直撃した昨年の店舗販売のどん底は4~5月。4月に緊急事態宣言が発出され、一気に緊張感が高まった。
外出自粛が要請され、4月にはほとんどの百貨店が休業に追い込まれた。この時は、百貨店店舗の売り上げが「前年比98%減になった」と木村。
大変な事態となったが、ここで力を発揮したのがインターネット通販。
コロナ前にもネット販売を始めていたが、リアル店舗を閉じざるを得なくなって、同社はネット経由での販売を強化。すると、内外から一気に注文が堰を切ったように舞い込んできた。
ネット販売による売上高は、4月には前年同期比で4・8倍、5月に5倍にのぼった。6月以降も前年比の2倍程度のペースで、木村はこのネット販売について「そんなに目くじら立ててやろうとは思っていません。国内の生産量が決まっていますからね」と語る。
コロナ禍で、百貨店などリアル店舗はかなり影響を受けたが、ネット通販にはかなりの手応えを感じているようだ。