2021-03-03

「関西には潜在力がある。あとは実行あるのみ!」覚悟を共有した「関西財界セミナー」

オンライン開催での開会式で挨拶をする松本正義・関西経済連合会会長

いま一つまとまりきれていなかった関西だったが、コロナ禍で本気度が増してきた──。関西財界人らが国や企業のあり方、生き方・働き方などについて自由闊達に議論する「関西財界セミナー」が開催された。関西経済同友会代表幹事の深野弘行氏は「関西で万博が開かれる。我々の未来に向けた生き様を世界に発信できる」と強調する。今回はコロナ禍で史上初のオンライン形式となったが、課題に直面していることを認識した上で次々と提言が相次いだ。関西を変えられるかどうかは関西財界人らの覚悟次第だ。

米国や台湾からも同時参加

「危機を乗り越え、コロナ禍を変革の糧とするために、企業人としてどう行動し、どんな未来を作り出すべきか議論いただきたい」─。関西経済連合会会長(住友電気工業会長)の松本正義氏はこう問題提起する。

 1963年以来、59回目を数える「関西財界セミナー」。通常であれば京都の国立京都国際会館で2日間にわたり、総勢700人を超す企業経営者や学者などの有識者が一堂に会して、国際情勢における日本の役割や東京と地方のあり方、企業経営の変革などについて語り合う。

 しかし、今回はコロナ禍という未曽有の危機下。開催自体も危ぶまれたが、「先の読めない時代が続くからこそ開催の意義がある」(関西経済同友会代表幹事・伊藤忠商事専務理事の深野弘行氏)とし、開催期間を2月4日の1日だけに短縮し、初のオンラインで開催に踏み切った。

 今回のテーマは「危機を乗り越えて創る未来~関西の底力を発揮するとき~」─。参加者はオフィスはもちろん、自宅などからリモートで加わり、デジタル端末を通じて自らの役割と使命、そして危機を生き抜くための方策と覚悟を力強く語った。

 6つある分科会で共通したキーワードが「デジタル化」だ。発言者からは必ずと言っていいほどこの言葉が飛び交い、日本の「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」の必要性とその立ち遅れが指摘された。

「われわれは変われるのか? 」と唯一、疑問を提起するテーマを掲げた第6分科会には、米国や台湾に在住している経営者も参加。そのうち米シリコンバレーの投資キャピタリストでトランスリンク・キャピタル共同創業者の大谷俊哉氏が米国から見た日本について意見を述べた。

 シリコンバレーの高校のアジア人比率は78・2%に上り、全人口の43%が移民。また、昨年36万台の電気自動車を販売したテスラを紹介し、シリコンバレーの「多様性」や「スピード感」と日本との違いを説明した。

 りそなホールディングス(HD)会長の東和浩氏は「昭和の成長期の成功体験が重しとなり、失われた20~30年の反省が生かせていない」と生産性の低さを指摘。その背景にはハードの導入遅れだけでなく、他社との調和を過度に重視し過ぎている点や判断・行動のスピード感の欠如、失敗を許さない文化などがある。機械製造のサノヤスHD社長・上田孝氏も「経営判断のスピードは上がっているが、
(法令などの)規制や官への配慮が行動を止めている」と話す。

 ただ、シリコンバレーを語ると、光の側面ばかりに焦点が当たるが、大谷氏は「収入格差も広がっている。シリコンバレーでは年収1400万円の人でも中心街に住むことができず、2時間かけて通勤している例もある」と負の側面も紹介する。

 プラスとマイナスの両面をいかにマネージしてイノベーションを図るかがポイントになる。


6つの分科会ではオンラインでも参加者同士の議論が深まった

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