2021-03-09

規制・構造改革に身を投じて約20年 フューチャー会長兼社長・金丸恭文の「国の制度設計にアーキテクチャーを!」


「トータルとしてのデザイン設計がない!」

 金丸氏は政治家と選挙の関係性や政治的現実に触れながら、「やり遂げようと思うプロジェクトとしては、割と大がかりな横断的なプロジェクト」との認識を示し、次のように述べる。

「しかも中央政府と地方自治という両面から取り上げなければいけない課題。(そうした仕組みを)デザインするときに、トータルのデザインになっていないんですよね。中央政府は中央政府、地方自治体は地方自治体とバラバラです。野球でいえば三遊間に大きな穴があるという感じになります。だから整合性がないし、連携がない。今回のコロナ禍で機動的に動かなければいけないところですが、その機動性がない」

 国と地方自治体との連携も不十分というのが現状。

「地方自治で個別にやるべきことと共通にやるべきことの切りわけができていないので、今でもワクチンの接種管理システムを地方自治体でバラバラにつくっていいよと言っているわけです。それでバラバラに予算をつけている」

 現状では、国と自治体の連携・連絡という意味で、機動的に双方をつなぐシステム構築ができていないということ。

 自治体は自治体でこれまで独自にシステムを構築し、自治体間はともかく、国(中央政府)とのシステム的連携も不十分。

 要するに、国のカタチをどうするかという視点で見たときに、「アーキテクチャー(基本設計)がない」という金丸氏の指摘。

 菅義偉内閣は、日本全体の生産性向上を目指すということで、昨年9月の政権発足後、すぐにデジタル庁設置構想を掲げ、今秋には発足させる予定だ。

「国民へのサービスはそれまで紙でしたが、デジタルになって、どれだけ便利になるのか、仕組みが使いやすくなるのか、デジタルの成果物が目の前に出てこないといけない」

 国と自治体、行政と民間、あるいは民間企業同士、個人と個人が機動的にデータ交換、対話交流がスムーズにできるようにしていくことが大事。

 省庁再編は1990年代後半の橋本龍太郎内閣のときに提起され、2001年(平成13年)森喜朗内閣時に、それまでの1府22省庁から1府12省庁に改編された。

 それから20年、省庁の数は縮減され、コンパクトになった感じだが、機動的になっているかどうか。例えば、省庁間に横串を刺したり、入れたり、官民連携を推進するという縦横無尽の制度設計はできていないのが現状。

 政府の中に、そういう制度設計者がいないということか?

「今まではいなかったと。それを自分の仕事だと思っていなかったということでしょう」と金丸氏は次のように語る。

「コロナ危機で、日本はIT後進国だということが分かったわけですから、それを今から挽回しなければいけない。デジタル庁の組織のミッション(使命)ですね。これからようやく始まるわけですが、先を走っているところのスピードより速くないと、日本は絶対に追いつかない」

本誌主幹・村田博文

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