2023-05-24

《アイリスオーヤマ》会長・大山健太郎の「変化はチャンス」論

大山 健太郎・アイリスオーヤマ会長

会社は誰のためのものか?



 ─ 大山さんが19歳でお父さんから会社を受け継いで、大阪から仙台に拠点を移したのは何歳の時でしたか。

 大山 33歳です。当時は水産業や農業向けの商品をつくっていましたから、大きいマーケットは東北です。だから、大阪でつくって東北に運んでいたら運賃が高いということで、現地生産を進めました。

 当社の工場は、ほとんど現地生産・現地配送が基本です。工場だけ見たら集約した方が絶対生産性は上がりますけど、それを分散しているのは、物流コストや現地生産・現地販売を考慮した上でのことなのです。

 ─ 仙台に来たことがその後の成長につながるんですから面白いですね。ある意味で、アイリスオーヤマは変化の時に伸びていると。

 大山 はい。それはなぜかと言ったら当社が非上場だからです。上場すると大きな計画変更があった場合には社外重役と議論して、株主総会で株主に諮って、プレス発表までいれたら決定するのに半年ぐらいかかってしまうんです。

 ですから、コロナの時にも、もともと当社はマスクを中国で生産していましたけど、いち早く国内生産を決めました。これができるのは非上場だからであり、半年も議論をしていたのでは遅いです。

 上場企業になると、どうしてもいろいろな投資家がやってくるので、早くリターンを回収しなければならない。リターンをとるために資産を売り払え、無駄なものを省いて配当をよこせと言われるわけですね。

 それが非上場であれば、オーナー家は自分が食べていける分だけでいい。残った利益は全部会社に入れることができるから、次なる投資ができるんです。

 ─ これは改めて、会社は誰のためのものかという議論にもつながってくる話ですね。

 大山 そうなんです。わたしはいつも言っているんですが、上場すると会社は株主のものになってしまう。しかし、当然ですが社員のいない会社はありません。売上をつくり、商品開発をし、利益を出すのは皆、社員じゃないですか。社員あっての会社なんですから、社員を中心に物事を考えるのは当然です。

 ですから、われわれオーナーの社長、会長と言えども、あくまで社員の代表だと。これはわたしのフィロソフィーです。

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