2021-02-17

2050年「再エネ5割」へ 課題は自動車・鉄鋼業界

2050年にカーボンニュートラルは実現できるか?(写真は水素ステーションの様子)

2050年に190兆円の経済効果?



 

「我が国の新たな成長の源泉となるのはグリーンとデジタル。イノベーションを目指す大胆な投資を率先して支援し、次なる時代をリードしていく」

 1月1日の年頭所感で、菅義偉首相はこう宣言した。

 2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言した日本。現在は経済産業省を中心に具体的な道筋を決めるための議論が進んでいる。

 12月に総合資源エネルギー調査会で行われた議論では、参考値として、2050年に発電量の約50~60%を再生可能エネルギーで賄う方向で議論を進めていく方針を固めた。経産省内では「100%再エネで賄うことは困難」との声も出ており、洋上風力発電などの再エネを最大限導入しつつ、原子力や火力も約30~40%導入。また、燃焼時にCO2(二酸化炭素)が出ない水素発電やアンモニア発電の技術開発を進める方針だ。

 目標実現のためには、自動車の電動化や再エネの普及に欠かせない蓄電池システムの構築、そしてCCUS(CO2の回収、利用、地下貯蔵)などの技術開発が必要になる。すでに2030年代半ばには自動車の新車販売でガソリン車を止め、電気自動車(EV)にする方針。これらの施策を推し進めることで民間の投資を呼び込み、政府は2030年で年額90兆円、2050年で年額190兆円程度の経済効果を見込んでいるようだ。

 ただ、これらの実現には課題が山積。製造業の中でもCO2排出量の多い鉄鋼業界や、これまでガソリン車を中心に部品メーカーなどの“系列”を構築してきた自動車業界は雇用の維持を含めて厳しい局面に立たされている。

 日本自動車工業会会長(トヨタ自動車社長)の豊田章男氏は「(カーボンニュートラルの実現に)全力でチャレンジする」としたものの、「モノづくりを残し、雇用を増やし、税金を納める自動車業界のビジネスモデルが崩壊すると理解してほしい」と厳しい胸の内を吐露した。

 脱炭素化に向けた動きは世界中で加速する一方。技術開発の行方と共に、日本企業の底力が問われている。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事