伝統的な米国の政治のやり方に戻る
── 菅義偉首相は早期の訪米を実現し、バイデン氏との信頼関係を構築したいと言っています。
森本 総理は日米同盟の一層の強化をしようと考えておられました。従って、1月28日に電話会談が行われ、「自由で開かれたインド太平洋」や日米豪印の連携を確認できたことはよかったと思います。
── オバマ大統領は「もはや米国は世界の警察官ではない」と言い、トランプ大統領は「自分たちの国は自分たちで守れ」と言ってきたわけですね。
バイデン氏というのは、こうした流れを汲むのか、それとも違う特色が出るものですか。
森本 これはまだ分かりません。同盟国には経費だけでなく、もっと実質的な協力を求めてくると思いますが、具体的な政策は今後、チームが組まれてからつくられ、バイデン大統領は権限を委任して、各担当者がそれぞれ調整をしてから政策が上にあがってくると思います。
ですから、これまでのように、安倍晋三・前首相がトランプ大統領と直接電話して物事が決まるわけではない。いわゆる、下から積み上げてきた政策が上に上がっていくという以前のやり方に戻ると思います。
── 具体的な政策の中身が分からないとはいえ、バイデン氏はトランプ政権下で離脱した地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」への復帰を打ち出すなど、トランプ政権からの政策転換を打ち出しています。
森本 今までに分かっているバイデン外交の特色は、多国間協調、同盟関係の重視、それから政策の中で最重要にしている気候変動です。
菅総理も、2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す方針を掲げましたが、これは単なる環境問題ではない。2050年に二酸化炭素(CO₂)をゼロにするということに伴い、社会が大きく変化するわけです。
後編に続く