2023-03-22

「挑戦する社員には報酬で報いる」パナソニックHDが進める人事制度改革

新家伸浩・パナソニック コネクト執行役員常務CHRO

年齢や勤続年数にかかわらず報酬を職種ごとに設定



「今はVUCA(ブーカ=変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代と言われ、個人のキャリア意識が多様化する時代に変化している。社員の意識をいかにモチベートし、力を発揮させるかということで、人事制度も変化していかないといけないし、社内のカルチャーも大きく変えていかなければならない」

 こう語るのは、パナソニックホールディングス(HD)の子会社で、パナソニック コネクト執行役員常務CHRO(最高人事責任者)の新家伸浩氏。

 企業向けシステム開発などを手掛けるパナソニック コネクトが、4月から新たに職務を明確化して成果に応じた報酬を支払う「ジョブ型人事制度」を導入する。これまでの年功序列を基本とするメンバーシップ型の制度では、同社が求める専門性の高い人材の採用や育成が困難になってきたことが大きい。

 2022年4月からパナソニックグループは持株会社制に移行。事業会社ごとに、自由に様々な施策や制度を展開できるようになった。今回の同社の働き方改革もその一環であり、全社員一斉にジョブ型制度を導入するのは、パナソニックグループでは初めての試みだ。

 現在、パナソニックグループでは、「車載電池」、「サプライチェーン(供給網)ソフトウェア」、「空質空調」の3つを成長領域に位置づける。

 パナソニック コネクトは、サプライチェーンソフトウェア領域の中核となる会社。傘下には2021年に買収した米ソフトウェア会社ブルーヨンダーがあり、買収総額は約8500億円。グループにとっては過去最大級のM&A(合併・買収)で、何としても買収の成果を出さなければならない。

 それだけに、今回の人事制度改革にかける思い入れも強く、新家氏は「会社を成長させていくためには、われわれ人事が変わり、会社を変えていくことが重要。人を管理する人事から人を生かす人事に、わたしたちも変わっていきたい」と語る。

 同社では約1400のジョブディスクリプション(JD=職務記述書)を定義。全てのJDを公開し、組合員を含む全社員約1万名へ一斉導入する。職務ごとに必要なスキルや能力を明確にして、社員のチャレンジ意欲を喚起させることが狙いだ。

 これまでは、どうしても会社全体で昇格できる人数枠があり、現場の思いとは別に会社が人材をコントロールしてきた。

 しかし、新制度に移行することにより、「これまで先輩がいるからまだ自分は上がれないなと諦めていた若手が自由に挑戦できるようになることで、複数人が同時に昇格するとか、全体のベースが上がるような仕組みに変わっていければ」(新家氏)。

 また、これまでは社内の公平性を重視しており、一律的な報酬設定をしていた。このため、一部の職種や等級においては、競合他社と比較して報酬の競争力に劣る場面もみられたため、年齢や勤続年数にかかわらず、報酬を職種ごとに設定。仕事別に競争力のある報酬水準に変えようとしている。

「人によっては、月額報酬が50%アップする事例もありうる。これまで優秀人材の確保がなかなかできないとか、社員が挑戦しても報われないという場面もあったが、新制度においては競争力ある報酬体系を実現できているし、挑戦する社員には報酬で報いるという環境を整えていくことが大事」(新家氏)



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