2021-02-13

日本のインフラ輸出がまたも頓挫 台湾新幹線の交渉は打ち切り

インフラ輸出はどうなるのか(写真はイメージ)

台湾新幹線を運営する台湾高速鉄路は、日本の日立製作所、東芝連合が提案していた新型車両の購入交渉打ち切りを決めた。金額が高いことが理由だが、安倍晋三政権時代に、熱心に売り込みをかけていた日本のインフラ輸出は、事実上頓挫している。

 菅義偉首相は昨年12月、「インフラシステム海外展開戦略2025」を取りまとめた。政府のインフラ輸出戦略の主軸として脱炭素化などの環境技術やデジタル技術・データの活用促進を新たに掲げた他、25年の同システム受注額目標34兆円と20年推計の25兆円を4割近く上回る野心的な目標を打ち出した。菅政権発足後初のインフラ輸出戦略だが、原子力発電所や新幹線の輸出はめっきり影が薄くなってしまった観がある。

 原発輸出をめぐっては、新興国との競争激化に加え、建設コスト高騰が日本勢を直撃した。東芝は米国子会社だったウェスチングハウス(WH)を売却し、三菱重工業はトルコ、日立は英国の原発プロジェクトを断念。

 日本の重電メーカーがお得意とした石炭火力は、バイデン米政権で気候変動問題担当大統領特使を務めるジョン・ケリー元国務長官が「発電所に資金を拠出したり、発電能力を拡大したりしている国がある」とにらみを利かせており、輸出拡大は困難だ。

 新幹線ビジネスでは、台湾への新車両導入が挫折した他、タイでの高速鉄道整備計画も従来予定だった19年着工に間に合わなかった。インフラ輸出の采配を首相官邸で振るうはずの和泉洋人首相補佐官が、新型コロナウイルス感染拡大への対応に忙殺されているとはいえ、目を覆うばかりの惨状だ。

 菅政権の脱炭素の目玉には、「二酸化炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)」など各国がしのぎを削る先進技術を用いたものが多く、産業界では「商業化できるならとっくにやっている」(重電メーカー)と先行きを不安がる声もある。

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