2021-02-12

【菅下清廣の「株価はどう動く?」】2021年は主役交代の年、「遊び」は新たな投資テーマに

2018年10月にアベノミクス相場が終了


 今回は相場の短期、長期の見通しを説明したいと思います。短期的には、マザーズ指数の高値が2020年10月14日、1368ポイントで天井を打って調整局面に入っています。

 ここから3カ月は21年1月14日ですから、1月中旬からマザーズ銘柄が出直してくる可能性があったのですが実際、20年に活躍して、その後売られた銘柄の値が戻りました。ただ、あくまでもこれは戻り相場で、長くは続きません。

 もう一つ、今回の日経平均株価、あるいは日米の株式市場の上昇がどこから始まったかというと、20年10月30日の安値、2万2948円が出発点でした。その後11月3日の米国大統領選の結果、バイデン勝利を受けて米国株が大幅高になりましたから、日本の株も連動して上昇したという動きが、今なお続いています。

 昨年、日本の株式市場を牽引していたのはマザーズ市場でした。特に12月だけで26社がIPO(新規株式公開)し、個人マネーが集まりました。それが先程指摘したように10月で天井を打ち、3カ月の調整局面を経て、戻り相場で上昇したのですが、1月末からは再び調整局面に入りました。

 日経平均はコロナショックの20年3月19日に1万6358円で底入れし、そこから株価は上昇を始めました。その後の最初の高値は6月9日の2万3185円ですが、その後2万4000円の壁を抜けることができませんでした。

 6月から10月まで5カ月揉み合い、10月30日の2万2948円を出発点に新しい上昇相場が始まっています。

 つまり、12年11月14日から始まったアベノミクス相場は、足掛け7年上げて、18年10月2日に2万4448円で天井を付けて終了していたのです。これは今だからわかることです。

 安倍政権はその後も続き、その間、成長戦略を実現することで、10月2日の高値を抜くチャンスがあるのではないかという期待がありましたが、安倍首相が退陣し、コロナショックで株価が底入れし、菅政権、米バイデン政権が登場したところで、アベノミクス相場の終わりが、波動から見ても確認されたわけです。

 波動を見ると、戦後6回目の大相場があったのだということがわかります。出発から天井まで足掛け7年でしたが、この7年から10年というのは日柄の波動で、景気循環とも連動しています。大相場の後は最低1年休みます。

 18年10月に天井を付けた後、19年末まで1年超揉み合って、それでも株価は底入れしていませんでした。市場にアベノミクスへの期待が残っていましたし、底入れするだけの悲観材料が出てこなかったからです。しかし、その後20年に入って、コロナショックという非常にわかりやすい材料によって底入れし、そこから新しい上昇波動が始まっています。

 アベノミクス相場は7年で、安値から2・38倍上げています。戦後5回の大相場のうち4回は出発点から5倍以上上げていますが、1回だけ2・39倍という時がありました。景気がよくなって株価が上昇している途中で石油ショックが起き、腰折れしてしまったのです。

 アベノミクス相場は、この時の波動とほぼ同じです。「桜を見る会」に代表される政治スキャンダル報道でリーダーシップを失い、腰折れしたわけです。逆に言えば、株価は安倍退陣を読んでいたと言えます。

コロナショックから始まった相場の行方


 そして20年3月のコロナショックによる底値から始まった今回の相場がどうなるかという読みが大事になってくるわけですが、菅首相が日本のデジタル化に成功、日本がデジタル産業国家となり、脱炭素でも世界トップクラスの国になるという方向に進めば、「デジタル」と「グリーン」関連銘柄が株価を牽引し、上昇相場が続きます。この時には戦後7回目の大相場がやってくることになります。

 この時には、日経平均株価は1989年の高値を目指す展開となるでしょう。これが楽観シナリオです。菅政権が短命に終わり、今年の総裁選では別の人物が首相になるという悲観シナリオもあります。この場合には本命・岸田文雄氏、穴馬は安倍氏の四選出馬となるでしょう。対抗に誰が出てくるかは今のところ、わかりません。

 中立シナリオは、菅首相が不人気のまま政権を継続するものの、次第にリーダーシップを失い、2、3年先に新しいリーダーの台頭が望まれるというものです。この場合は河野太郎氏、西村康稔氏、林芳正氏、世耕弘成氏といった人たちが有力候補として挙がります。

 こうした大局観とは関係なく、当面は日米の株高が続きます。これは以前から指摘しているように世界的な超金融緩和と、景気対策によるものです。特に米国はバイデン大統領が1兆9000億㌦、約200兆円の景気対策を公約していますが、実行されればバブルになります。

 つまり、21年は米国発のマネーバブル相場の可能性が高いと言えるでしょう。そして投資テーマである「デジタル」と「グリーン」の中から驚きの株価を付ける銘柄が出てくることが予想されますので、日経平均よりも個別銘柄勝負となります。

 そして21年は主役交代の年になります。「デジタル」、「グリーン」の波に乗れない企業は消える恐れすらあるのです。1月16日の日本経済新聞のコラム「大機小機」は「コロナ後の世界、3つの潮流」というテーマでしたが、私の大局観とも近い内容です。

 3つの潮流は第1に世界秩序の再構築で世界は米中とEU、インド太平洋+日本の4極となる、第2に新企業群の誕生でデジタルとグリーン革命による新しいビジネスモデルの誕生、第3は新文化の開花で、「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」の時代の到来を指摘しています。第2はもちろん、第3の新文化は今後の有望な投資テーマとなり得ます。

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