2023-02-15

再考 日本の安全保障戦略(最終回) 元防衛大臣・森本敏

「戦略3文書」に基づく防衛力整備




 ─ 昨年12月、政府は新たな国家安保戦略などの「戦略3文書」を閣議決定しました。米中対立やロシアによるウクライナ侵攻が続く中で、この戦略3文書の策定の意義について、どのように受け止めていますか。

 森本 今回策定された戦略3文書には、広範多岐にわたる意欲的な戦略指針が盛り込まれており、今までにない画期的な内容になっています。

 特に、国家防衛戦略は、従来の枠組みに縛られない発想に基づく独創的な内容となっていて、日本にとって戦後、初めて本格的な国防戦略ができたものであり、それは歴史的な意味合いを持っていると考えています。

 ─ かなり森本さんの評価が高いですね。

 森本 それがどういうことかについて簡単に説明します。

 先の大戦が終わった5年後の1950年(昭和25年)に朝鮮戦争が起こり、53年に休戦協定ができた後、翌年の54年に自衛隊ができました。その後、世界は冷戦期に入り、自衛隊も育っていきましたが、日本の防衛は実際のところ、米国に大きく依存したものでした。しかし、その中で、日本として独自の防衛力を作ろうとしました。

 冷戦期におけるわれわれの目標は、極東ソ連軍の脅威を日米で抑止することでした。日本はそのための防衛力整備を進めていましたが、ソ連軍が増強されることに伴って、防衛力も防衛費も増やさざるを得ないことになり、どこまでこれが続くのかという問題が起こりました。

 そこで、日本の防衛に必要最小限の防衛力とそれに見合う予算の枠を設定すべきという歯止め論が出てきました。1976年にできた「防衛費の国内総生産(GDP)比1%枠(当時は国民総生産=GNP比)」と「基盤的防衛力構想」がそれです。


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