2021-02-11

なぜ今、大和ハウスは 「データセンター」に注力するのか?

大和ハウスが開発を進めている「(仮称)千葉ニュータウンデータセンター パークプロジェクト」(提供:AirTrank TOK1,印西市)

建設と不動産開発の融合─。コロナ禍でテレワークが浸透、ネット通販が急拡大するなど、「データ量」が増大している。その受け皿となるのが「データセンター」。場所は千葉県印西市。ここで日本最大のデータセンター開発に踏み切ったのが大和ハウス工業。データセンターは住宅、物流施設に次ぐ成長の柱とも目される。東京ドーム7個分の敷地に、東京電力の変電所まで誘致。この開発が目指すものとは─。

東京ドーム7個分の広大な敷地に


「着工を発表した後、データセンターに関して、非常に多くの反響、お問い合わせをいただいている」と話すのは、大和ハウス工業建築事業部事業部長の更科(さらしな)雅俊氏。

 2020年10月5日、大和ハウスは千葉県印西市の千葉ニュータウンで進めている「(仮称)千葉ニュータウンデータセンターパークプロジェクト」の1棟目「Air Trunk TOK1―B」に着工した。

 このプロジェクトは総敷地面積23万5000平方㍍、総延床面積約33万平方㍍という規模で、この総延床面積は東京ドーム約7個分に相当。15棟のデータセンターを段階的に建設していき、全て竣工するのは2030年。日本最大のデータセンター団地となる。

 今、不動産開発においてデータセンターへの注目度が高まっている。かねてから第5世代の移動通信システム「5G」の時代到来でデータ量の増大が見込まれていたことに加え、コロナ禍で在宅勤務が普及、ネット通販の増加などでデータ量が急増。さらにデータセンターの需要が高まっているのだ。

「我々の会社自身もそうだが、全ての情報をアナログからデジタルにしていく時に、そのデータの受け皿としてのクラウドサービスが進化していく。不動産会社として、事業者の皆さんにデータセンターを供給していく責任があると考えた」と話すのは大和ハウス建築事業推進部営業統括部Dプロジェクト推進室長の井上一樹氏。

 他の事業者との差別化も意識している。大手ゼネコンもデータセンターを手掛けてきたが、これらはクラウド事業者からの発注を受けて建設を請け負うスタイル。対して大和ハウスはデータセンターを建て、そこに入居するクラウド事業者を募り、賃料を稼ぐビジネスモデルだ。

 井上氏は「データセンターにはまず、デベロッパーとして入る。そして今後は建設業としての強みも生かしていく」と話し、建設、不動産2つの顔を持つ利点を活用していく考え。

「今回のプロジェクトの前から、データセンター事業をやりたいという話をしており、Airtrunkさんを始め、多くの事業者と日常的に会話していた。ただ、データセンターは他の施設と違い、どこでもできるという性質のものではないという課題があった」(井上氏)

 データセンター適地を探す中で生きたのが、物流施設等の開発で培った地方自治体や都市再生機構といった公的機関との関係。今回のプロジェクトの土地は18年3月に千葉県、都市再生機構から購入できた。

 大事なのは地盤。印西周辺は「下総台地」と呼ばれ、強固な地盤を持つ。台地なので津波の恐れもないということで、BCP(事業継続計画)の観点から金融機関やグーグルもデータセンターを構えている。

 15棟のうち7棟には、オーストラリアの大手データセンター事業者・Airtrunkが入居する予定。

 同社にとっては日本で初めてのセンターだが「Airtrunkさんは『GAFA』など、大規模にデータセンターを利用する『ハイ
パースケーラー』とのパイプもある。今後の伸びしろに期待している1社。また、それ以外にも多くの事業者さんとコンタクトを取り、最もいい形を模索していく」(更科氏)

 データセンターにはサーバーなどの機器に相当量の電力を供給する必要があるが、今回は東京電力パワーグリッドが運営する最大1000MWの超高圧変電所を誘致。15棟で600MWを使用する予定だが、「この変電所が稼働すると、残った土地でもデータセンターが運営できるくらいの十分な電力を供給できる。これがプロジェクトの価値を高めている」と更科氏。

 当初、電力調達の目途が立たなければ工場など他の用途で使うことも考えていただけに、変電所誘致はデータセンター開発の推進力となった。

投資対象としての期待も高まる


 大和ハウスが進めている「Dプロジェクト」は、現在は主に物流施設開発ソリューションとして展開しているが、元々の成り立ちは物流に限らず、「土地の価値を最大限上げる」ことを目的にスタートしたもの。

 その意味でデータセンターは、Dプロジェクトに幅を持たせる事業になる。今後はさらに介護施設や病院などのシルバー事業、様々な公的不動産の活用などに投資をしていく方針。

 また、投資家の間でデータセンターへの関心が高まっている。今後の市場拡大への期待、他の投資対象に比べて高い利回りが期待できるということが理由。そこで大和ハウスとしても保有だけでなく流動化、売却も選択肢として持っている。

 大和ハウス社長の芳井敬一氏は今回のプロジェクトに関して「我々の大きな売りになってくる」と期待を寄せる。ただ、有望分野だけに土地の取得競争は激化している。前述のように地盤、電力確保などハードルが高いだけに、大和ハウスが今後もデータセンター事業を成長させるためには、まずは印西のプロジェクトを成功させると同時に、土地を含めた情報を、アンテナ高く掴むことができるかがカギを握っている。

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