2023-01-28

2023年は道理・道義が求められる年に【私の雑記帳】

道理と道義─。辞書には、道理は〝物事の道筋〟、道義は〝人の踏み行うべき正しい道〟、〝道徳の筋道〟とある。

 新年(2023)は、道理、道義が一番求められる年になるのではないか、そういう気がする。

 コロナ禍、ウクライナ危機は当分続く。コロナ禍は3年が経ち、ウィズ・コロナで前向きに生きていこうという空気が世界的に生まれて来ている。

 人の交流も始まった。あるホテルの関係者は言いう。「年始の会や各種の会合が増え、外国人客で1泊12万円の部屋の予約も一杯です」と担当者の表情も明るい。

 新幹線や地下鉄に乗っていても、この頃、旅行バッグを手にした外国人観光客の姿が目につくようになった。一連の円安で、日本での旅行を楽しみたいという海外の客も増えている。

「日本は清潔な国で、食も安心して食べられる。お腹をこわすこともないしね。家族で楽しめる安全な国だしね」という声を聞くと、コロナ禍の今、本当に嬉しくなる。

 一方で、ウクライナ危機。ロシアの侵攻に、ウクライナ国民は敢然と立ち向かい、東部や南部の領土を取り戻しつつある。

 1年前、理不尽に侵攻を始めたロシアのプーチン大統領。文字どおり、筋道の通らない侵攻だと世界の誰もが思う。ロシア国内の母親たちからも、「息子を返して」と声があがる。プーチン氏の旗色は悪い。彼は今、何を思うのか?

 古来、独裁者は成功しない。ヒットラー(ドイツ)、ムッソリーニ(イタリア)は第2次世界大戦で敗戦国となった。スターリン(旧ソ連)は戦勝国となったが、権力を握るため、政敵を次々と粛清し、独裁者の座を手中にした。終戦時は日本の北方領土に侵攻し、中国東北部にいた日本人兵士などをシベリアに抑留。その数60万人以上といわれ、極寒の中で約10万人が死亡したとされる。

 筋道の通らないやり方は内部崩壊を起こす。終戦(1945)から46年後にはソ連邦は崩壊。その中心にあったロシアが30年後にウクライナに侵攻という蛮行。

 自由主義と専制主義との相剋の時代といわれる。

 日本は、ロシア、北朝鮮、そして中国と、専制主義の3か国に隣接。その地理的な環境の中で、『安全保障の確立』というテーマが重くのしかかる。

 自分の国は自らの手で守る─という道理を基本にしながら、どう経済を運営していくか。経済安全保障を含めて、『国のカタチ』、そして企業も個人も新しい生き方の模索が始まっている。

 日本の経済リーダーを取材していて、多くがこの状況を真摯に捉え、逞しく、しなやかに生き抜こうとしている姿に力強さを感じる。

 本誌恒例のワイド座談会は『新春特別号』で掲載させてもらったが、各リーダーに共通するのは、難題から「逃げず、たじろがず、そして諦めない」精神であった。

 リーダーのこの姿勢が組織を引っ張る。1人ひとりが力強く、自分たちの運命を自分たちの手で切りひらくときに大いに力となることを痛感させられる。

 結局は、「人」の潜在力の掘り起こしであり、力を合わせての難局乗り切りだと思う。今は、その潜在力を発揮する時だ。

「今は文字どおり、海図なき航海を強いられている時だと。海図がない航海というのは、どこに岩礁がある、どこに海流がある、どこに行ったら暴風圏に入るのかが分からない中で航海を続けていかなければいけない。そこで大事なのは、ちょっと海の色が濃い緑色から薄い緑色に変わったら、浅瀬に入ってきたなと。浅瀬に入ったら、岩礁があって座礁する危険があるので、足元を見なければいけない」

 アサヒグループホールディングス会長の小路明善さんは「変化の兆し」をしっかり読み取ることが大事とし、経営者には「直観力が求められる」と語る。

「直観力は経験に裏付けられたものなんですけれども、瞬時に判断するときには、もうデータを集めている時間がないんですね。やはり船長、経営トップが経験に裏付けされた直観力で何が起こるかということを判断していかなきゃいけない」

 そして、大事なのは、歴史は繰り返すというが、「同じ時代ではないということ」と小路さんは次のように語る。

「じゃあパンデミックがスペイン風邪(1910年代)と同じかと言ったら、やっぱり違う。だから、その直感力というのを働かせないと。やや矛盾しますが、その際、1人の判断だけでは駄目なんですね。やはり衆知、英知を結集し、パワーに変えていくと」

 リーダーの使命と責任は重い。そして、1人ひとりの潜在力を掘り起こすという課題だ。

 危機や試練は人を逞しくする。

 産業界では、混沌の中を生き抜く仕組みづくりが進む。情報サービス領域の拡大に注力する凸版印刷は、今年1月にホールディング化を行い、グループ各社に横串を刺し、潜在力の掘り起こしを進める方針。

 セキュリティ関係事業群と子会社のトッパンフォームズが1つの会社になり、『TOPPANエッジ』として新しいスタートを切る。

「エッジを利かすとか、事業の裾野を広げるという意味の新社名です」と凸版印刷社長・麿秀晴さんはホールディング体制の狙いをこう語る。

 このコロナ禍では変革の下準備に入り、「構造改革、ポートフォリオの変革に関しては、どちらかと言うと、1年前倒しでやってきました。これからはトータルソリューションの会社としてやっていきたい」と姿勢は前向きだ。

 社名に『印刷』があるので、印刷事業が主体と思われがちだが、全体売上(約1兆6000億円)のうち、印刷関係は約5000億円と3分の1以下の比率。

 印刷技術の延長線上でフォトマスクなどエレクトロニクス領域を次々と拡大。セキュリティ事業などを含めて、今の事業形態は情報サービス化している。

 コロナ禍では、自治体と提携してワクチン接種会場の設営、運営、管理まで手がける子会社もある。サービス領域は広がる。

 創業122年の歴史があり、元々は大蔵省(財務省)印刷局の若手が独立して起業した会社。「当時、ベンチャーという言葉がなかった時代です。お札の偽造防止とか、株券の印刷、その後はキャッシュカードや金券に等しいものを扱わせていただいているのも、挑戦の歴史があるからです」

 印刷技術を進化させて、今日のデジタル化やセキュリティ領域の事業化がある。

 先人から今日まで、開拓魂のある会社は強い。

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