2023-01-16

ファシリティマネジメントの役割とは何か?  北川 正恭・日本ファシリティマネジメント協会 JFMA賞審査委員会委員長

北川 正恭・公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会 JFMA賞審査委員会委員長 (早稲田大学名誉教授)

地域との共生・共創に対する意識が強く出てきている



 ─ 12月13日に「第17回 日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)」が決まりました。審査委員長として、今回の総括と入賞者の特徴を聞かせてもらえますか。

 北川 わたしは今回の審査を通じて、デジタル革命が起きて、世界中であらゆることが大きく変わり始めているなということを非常に強く感じました。また、その促進剤として、コロナのまん延ということがあって、時代が大きく転換しているということを、FMの選考を通じて感じました。

 具体的に何を感じたかと言いますと、一つはこのFMの世界もSDGs(持続可能な開発目標)ですね。誰一人取り残さないということで、本来そういう大きな社会課題は公共の受け持ちだったんですが、民間の企業の皆さん方も、いわゆる、社会課題は私企業である自分たちも背負わなければいけないと。そういう思いが非常に強くなってきていると感じました。

 それは例えば、今までは自分のFMを論じる時には、企業内部の従業員の課題であるとか、企業の効率化とか、いろいろ考えがあったんです。

 もちろん、これが現在もメインにはなるんですが、最近は地域社会への貢献、Well being(ウェルビーイング=身体的・精神的・社会的に満たされた状態)にするためにという考え方が非常に強く出てきて、地域との共生や共創に対する意識が非常に強く出てきているなということを感じました。

 ─ 企業もより社会との共生・共創を意識するようになったということですね。

 北川 ええ。もう一つは環境問題ですね。これも大きな社会課題ですが、熱波や寒波、線状降水帯などの気候変動の問題に対して、今まではいわゆる地域単位で見てきたことが、これからは地球規模の単位で考えていかないとカーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)は達成できないということで、企業の方々も経済だけではなく、社会課題も共に解決していこうという意識を強く感じられたということです。

 ただ、どちらかというと、大企業は人材も資源も豊富ですから、企業によって濃淡があるとはいえ、こうした意識を強く持っていることを感じたのですが、中小企業の皆さんは心の中での変革は進んできているのかもしれませんが、まだそこまで進んでいないのかなと思いました。

 ─ 中小企業は大企業に比べて専門人材などの経営資源が乏しいので、そこまで考える余裕がないのかもしれませんね。

 北川 そうかもしれません。

やはり、いわゆる経営資源としてのヒト・モノ・カネという中で、モノのFMに対するトップマネジメントですね。

 トップの感覚がまだ完全に普及したとは言いがたいと思う一方で、ファシリティ担当の皆さん方が努力している姿も見えたなというようなことで、濃淡があるにせよ、まさにFMの新しい時代の到来ということを、この審査を通じて感じました。

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