「事業を進化させる」──。新たなアサヒグループをみんなで築いていくには、「1つはイノベーション」と小路氏は強調し、2つ目にディスラプション(創造的破壊)、そして3つ目にデジタルトランスフォーメーション(デジタル革命)の取り組みが必要と訴える。
まず、イノベーションだ。「商品のイノベーション、仕事のイノベーション、サービスのイノベーション、こういった所にイノベーションを起こしていかないと駄目。いつまでも『スーパードライ』の銀ラベルをそのまま売っていたのでは駄目だと」
1987年(昭和62年)に登場した『スーパードライ』は当時、〝キレがあってコクがある〟と新たな味を開拓し、爆発的人気を呼んだ。それまで業績低迷の同社を一気に立ち直らせ、たちまち日本のトップブランドに仕立てた。以来33年。この間のイノベーションとしては、2010年にマイナス2度の『スーパードライ エクストラコールド』という商品開発がある。ビールはマイナス2・9度で凍る。その凍る寸前のビールを提供し、清涼感を味わってもらおうという狙いは見事に当たった。
このように進化した商品を創ろうと小路氏はグループ内に呼びかけるが、「これ以降、出ていません」と苦笑。「前例踏襲ではいけない。既存ブランドをそのまま延長線上で考え、ブランドエクイティを高めていくというのは駄目」と自らと関係者にハッパをかける。
事業会社のアサヒビールは2021年1月、スマートドリンキング宣言を打ち出した。お酒の飲み方の多様性を肯定していこうというもの。「飲める人、飲めない人も一緒になって、食卓とお酒を囲む。それぞれが尊重し合って、お酒を飲むから、お酒を楽しむ。このように、楽しい生活文化の創造を打ち出していきたい」
具体的には、2025年までに2019年比でアルコール度数3・5%以下のアルコール商品、あるいはノンアルコール商品の割合を
20%に高めていくという目標。これは2019年比3倍という高い数値。酔いのために飲むのではなくて、お酒を楽しみ、コミュニケ
ーションツールとして活用していこうということ。
コロナ禍を旧来の経営のあり方を見直すきっかけにしようという小路氏の考え。事実、コロナ危機は生き方・働き方改革を含めて、わたしたちに変革を促している。