2021-02-09

コロナ危機、そして国内市場縮小の 中、次の成長をどう図るか――アサヒグループHD・小路明善の「国内でビールの進化を図り、グローバル成長を!」



 今、海外の売上比率は30数%になり、グループ全体の利益の4割近くを占めるまでに国際事業は成長した。このグローバル化の成果を見ると──。

 売上高は16年12月期が1兆7069億円、それが19年12月期2兆0890億円と22%の成長となっている。事業利益(営業利益に受取利息や配当金、有価証券売却益などの営業外収益を加えたもの)は、16年12月期は1485億円、それが19年12月期は2130億円と43%増である。

 海外では企業価値を測る指標としてEBITDA(利払い前、税引き前利益、減価償却の総和)がよく使われる。そのEBITDAで見ると、16年12月期は2058億円、19年12月期は3048億円で48%増と5割増しになっている。このEBITDAを売上高との比率で見るマージン比率は16年12月期の16・1%から19 年12月期は18・9%と2・8ポイントのプラス(酒税抜き)。

 投資家が注目するEPS(1株当たりの当期純利益)は194・8円から310・4円と115・6円のプラス。自己資本(純資産)に対して、どれだけの利益が生み出されたかを見るROE(自己資本利益率)は11%から13%へと上昇。各指標とも19年12月期までは過去最高を達成している。

 そこへコロナ危機が襲来。このコロナ危機は観光、宿泊と共に飲料・酒類業界にも大きな影響を与えている。欧州では各都市で年末から今年初めにかけて、ロックダウン(都市封鎖)が行われ、日本でも首都圏の1都3県中心に『緊急事態宣言』が出されたばかり。人出が少なくなり、外食・飲食の機会が少なくなり、欧州全体の20年のビール販売量も1割減ったといわれる。

 コロナ危機による打撃は世界共通のもの。ワクチン接種が米国や欧州で始まり、日本国内でも今春から接種開始とされ、危機克服へ向けて曙光がさしてきた感はあるが、まだ緊張感と警戒感は解けない。消費者の動向にも変化が表れてきている。

 日本ではビールも飲食店向け業務用が落ち込み、家庭用が伸びるという変化。また、節約志向から、缶チューハイなどRTD(レディ・ツー・ドリンク)関連が伸びる。家庭で、缶のフタを開ければ、すぐ飲めるという手軽さが受けている。

 世界的に見れば、健康志向が進み、ビール市場もノンアルコールビールが堅調。ノンアルコールの販売はまだ酒類全体の2%程度とされるが、年間に数%の成長を続けており、こうした健康志向のニーズを中長期にどう取り込むかも今後の経営課題となってくる。

「はい、欧州ではビール事業1本だったのが、今はノンアルコールビールが非常に大きな柱になろうとしています」と小路氏も手応えを感じている様子。

 コロナ禍はビール・酒類業界に大きな構造変化を突きつけている。消費者のニーズやライフスタイルの変化に対応して、どう経営の仕組みを組み立てていくかという命題。こうした構造変化に、小路氏はどう立ち向かおうとしているのか──。

本誌主幹・村田博文

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