2021-02-01

【人生の転機】マックス・大野範子社長「がんとの闘いと新商品開発」

大野範子・マックス社長

当社は創業116年のメーカーです。

 戦前戦後の日本は現在と違い衛生状態が悪く、感染症も蔓延していました。しかし物資がなく、医薬品も高い状況でしたから、まずは石鹸を使って「清潔な状態を保ち、すこやかな生活を」と2代目社長の祖父が「レモン石鹸」を考案、学校を中心に全国に普及させました。

 私は2009年に36歳で社長に就任しましたが、先代社長だった父が体調を崩したことによる緊急登板でした。

 ビジネススクールにも通い、就任から1年半、手探り状態で社長業に取り組みました。考えたのは「100年続いた会社が次の100年も必要とされるためにはどうあるべきか? 」ということです。かつて石鹸は必需品でしたから、真面目に取り組んでいれば事業を継続することができました。

 しかし、世の中が大きく変化する中、お客様が求めるものも変わってきています。必要される企業、商品であり続けるために何か必要か? について考えてきましたが、なかなか答えが見つからなかったのです。

 そんな中、今度は私が子宮がんを患ってしまいました。手術をし、治ったかと思えば再発を繰り返し、結局5回がんと闘うことになりました。途中、ステージ4と診断され、余命宣告を受けたこともあります。

 抗がん剤も投与しましたが、副作用がありますし、肌も荒れます。当社の無添加商品も使っていましたが、効果が出る人、出ない人がいるのだということを改めて実感しました。

 そこで私はがんを克服したら、病気や肌にお悩みを持った方々にも寄り添って、使っていただける商品をつくろうと心に決めました。これは私がずっと悩んできた、これからの当社のあるべき姿ではないか? と思い至ったのです。「絶対に会社に戻ろう」と強い気持ちを持っ
て、がんと向き合うこともできました。

 会社に戻った後、業績は厳しかったのですが、当社の象徴「レモン石鹸」の廃止など商品の見直し、コスト削減などの構造改革と同時に体質改善を進めたところ、緩やかですが成長軌道に戻ることができました。

 今ではスキンケア、ボディケアなど、お客様のお悩みを解決する商品が売り上げの7割を占めるまでになりました。さらに地域活性化に貢献するスキンケア化粧品や、SDGsを見据え、プラスチック容器を不要とする業界初の固形シャンプーの開発などに取り組んでいます。

2015年の自社農園での作業の様子
職場復帰した後の2015年に自社農園で化粧品の成分となる植物を植えている大野さん

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