2022-12-21

【ジャオダック・川崎日郎社長】街の看板の価値をビッグデータ解析で評価、適正な価格で売買できる取引所を開設

川崎日郎・ジャオダック社長

まちづくりと広告の関係を考える上で、森ビルの森稔さんのタウンマネジメントの考え方というのは、
いまだにわたしにとってバイブルです。言葉の直訳で言うと、まちの経営なんですが、まちを経営するに当たって、いわゆる広告収益をもってして、その広告収益をどういうふうにして、まちに還元していくかというところの仕組みがすばらしいと思うんですよ。それこそ、まちの共感を呼ぶから、そこに広告があっていいと。屋外広告を英語で言うならば、インフォメーション・マネジメント・メディアですね。

森稔氏の一言に……


 社名の『ジャオダック』は〝JAODAQ〟(日本屋外広告相場情報システム)からくる。

 広告の価値を客観的にはじき出すシステム作りに着手。そのことが潜在成長力を秘める屋外広告・交通広告の可能性を引き出すことになるという思い。

「社名の元々のきっかけは広告の現物取引所を目指したんです」とは本人の弁。

 広告の現物取引所とは?

「広告媒体をその時その時の時価で買って時価で売るというのが、ジャオダックのフィロソフィーなんです。つまり、価格は広告会社が決めるのではないと。これまでも一応基準とされるものがあったとしても、それを必要とする人は高くても買うし、必要ではない人は安くても買わないし、広告の一番の欠点は市場性能がなかったということです」

 広告に市場性能を取り込む─。その思いから2018年に株式会社ジャオダックを設立し、業務を翌年から開始。

 コロナ禍前の日本の総広告費は約6兆9381億円。うち屋外・交通広告市場は5281億円(屋外3219億円、交通2062億円、2019年の数値)。

 これはマスコミ4媒体(2兆6000億円強。うちテレビが1兆8612億円、新聞4547億円)、インターネット広告(2兆1048億円)に次ぐ市場規模。ダイレクトメール広告(3642億円)、折込広告(3559億円)よりも大きい。

 コロナ禍約3年を経て、事業や消費活動もウィズ・コロナで対応する今、屋外・交通広告は〝移動する生活者〟を支えるメディアとして再評価されている。

「屋外広告の市場に透明性と適合性を創り出し、屋外広告のより活発な取引を促進して、市場の発展に貢献していきたい」

 業界の有り様を変革したいという気持ちが高まったのは、『六本木ヒルズ』建設を押し進めた森ビル社長・森稔氏(当時、故人)の一言。

『六本木ヒルズ』は高さ238㍍のオフィスビルを中心に、集合住宅、ホテル、映画館、レストランなどの複合商業施設づくりで、都市再開発のモデルとなった(2003年竣工)。

 森ビルは町全体を統括するタウンマネジメントを進めるため、それに必要な広告媒体事業を立ち上げようとしていた。この時の森ビルの担当部長が現同社社長の辻慎吾氏という関係。

 そうしたとき、当時の森ビルの総帥、森稔氏が「土地は路線価というものがしっかりあって、それで価格が決まっていくのに、広告というのはそういう基準がないのかね」と感想を洩らした。

『六本木ヒルズ』の建設時はインターネット勃興期で、まさに時代の変革期。インターネット広告も出始め、イノベーションの波が社会全体に押し寄せようとしていた。

「客観基準がなかったら、創ればいいじゃないか」─。森氏のこの一言に本人も啓発され、変革していくぞと起業。

「広告業はついつい英語を使うんですよ。わたしは極端なまでに、日本語にできるものは日本語にしようと」

 よく使われる〝サーキュレーション〟を〝接触可能人数〟という言葉に置き換えるなど、多くの人に分かってもらおうと努力。今後もデータベースを大事にし、客観性を保つためのプラットフォーム作りを進めたいという。

「正確性と共感がキーワードです」と屋外・交通広告の可能性掘り起こしが続く。

(村田記)


かわさき・じつろう
1968年(昭和43年)生まれ、兵庫県姫路市出身。早稲田大学第一文学部卒。91年(平成3年)オリコミ(現オリコム)入社、広告のセールスプロモーション部門を担当。六本木ヒルズのタウンメディア担当などを経て、株式会社スマートコムラボラトリーズ代表取締役社長。2018年株式会社ジャオダックを設立。

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