2021-01-30

【経済の本質を衝く!】熊野英生・第一生命経済研究所首席エコノミスト「消費の二番底懸念」

政府が南関東や関西などを対象に再発令した緊急事態宣言は景気を冷え込ませることが心配される。

 脳裏をよぎるのは、2020年4・5月の初めての緊急事態宣言の大打撃である。20年4~6月の実質GDPは、前期比減少率が年率換算で▲29・2%もの大幅な落ち込みになった。21年1~3月に同程度の打撃が再現されるのだろうか。

 結論から言うと、20年4・5月よりは打撃は小さいだろう。大きな違いは、海外の要因である。4・5月のときは、中国と米国が悪かった。中国は、2・3月と感染阻止のために経済活動を犠牲にした。米国も、3月はロックダウンで経済が落ち込む。日本の実質GDPは、
20年4~6月に外需の減少幅が対前年比で▲4・7兆円となった。同期間の民間内需は▲9・9兆円の減少幅である。

 全体(内需+外需)のうち、1/3が外需要因で、2/3が個人消費を中心とした民間内需の悪化である。今回は、中国経済が回復し、米国でも大規模な対策が用意されている。外需の減少は起こらないだろう。

 その一方で、今回、個人消費については落ち込みが避けられそうにない。外食、旅行、娯楽、衣料品などに減少が集中しそうである。これらは、飲食店の営業時間が午後8時までに制限されるだけでなく、消費マインドが萎縮することで節約される効果によるものだ。

 外食などは、消費全体が減少したときに、より大きく削り込まれる品目である。前回の緊急事態宣言のときは、4~6月にかけて消費性向(可処分所得の中から消費される割合)が65 %(1~3月)から54%へと▲11%ポイントも下がった。今回は、そのときの半分くらいの減少幅だとしても、20年1~3月の家計消費は、消費性向が▲5~▲6%ポイントくらいは落ちるだろう。

 すると、やはり外食、旅行、娯楽、衣料品はそれぞれ前年比▲10~▲20%程度落ち込むと予想される。個人消費は、20年は6~11月にかけて持ち直していただけに、その流れは1~3月に暗転する。消費が二番底をつける様相となるだろう。

 今後、感染リスクが収束して、もう安全だという状況にならないと、外食などの消費は再開しないだろうし、積極的な政策支援も打ち出しづらいと考えられる。この点は、20年6月以降の消費リバウンドが今後は再現されにくいとみられる背景になっている。目下、感染収束の切り札とされるのは、ワクチン接種だ。

 しかし、予定された接種の計画が進捗しにくいとみられる。ワクチン接種が始まっている米英では、計画が早くも遅れている。日本では早ければ医療関係者には2月下旬からワクチン接種が始まる。一般国民は4月くらいからの開始だろう。こうした接種の遅れも、消費者心理を上向かせるのが難しいとみられる一因になっている。

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