「第2のテスラ」を求める動き
2021年年頭の相場観を改めてお伝えします。今年は昨年来始まった、FRB(米連邦準備制度理事会)を始めとする世界の中央銀行による超金融緩和がピークを迎えるだろうと見ています。
ですので、結論から言えば、21年は世界の株式市場、特に日米の株式市場に「マネーバブル」の大波が押し寄せてくることになります。
今回のマネーバブルは、史上なかったような大金融緩和が背景にありますから、日本で1990年代に起きたようなバブルを大幅に上回る、史上最大のバブルの津波がやってくる可能性があります。
バブルで上昇するのは株式と不動産です。株式については「GAFA」、「MAGA」に代表されるニューハイテク株、広い意味でイノベーション銘柄に、世界の余剰マネーが殺到するのではないかと見ています。
特に日本でいえば東証マザーズ市場のニューハイテク、中小型成長銘柄の中から「第2のテスラ」が出てくることを期待する動きが強まると見ています。
20年12月は1カ月で26社が上場していますが、昨年後半から年末にかけてのIPO(新規株式公開)銘柄から、21年の投資テーマである「デジタル」、「グリーン」のニューヒーローが出てきます。
もしかすると、1つや2つの銘柄が上昇するのではなくて、多数の中小型成長株が上昇して、いくつもの「山」ができる可能性もあるのではないかと見ています。「総花的」な新興・成長株相場がすでに始まっており、その予兆が米テスラ株の急騰です。
1年前には100㌦台だった株価が直近1月8日には884㌦を付けていますが、投資家が「第2のテスラ」を求める理由がここにあります。
加えて、上昇しそうな資産がもう1つ出てきました。それがビットコインです。ビットコインは波動から見て大相場が来ていると見ています。ビットコインの過去の高値は17年12月、18年1月に240万円台でダブルトップを付けて、その後ちょうど3年間休んでいます。
20年11月の安値が150万円台でしたが、一気に430万円台まで上昇し、その後、押し目を入れた形になっていますが、相場世界では「初押しは買い」と言われています。
いずれにせよ、マネーバブルの大波が押し寄せており、そこで資金が集まるのは第1に米国、第2に日本になります。
ただし、すでにあれだけの金融緩和が行われている上、米国のバイデン新政権は2兆㌦規模の財政出動など強力な景気対策を打ち出しますから、年後半には資産インフレの傾向が強まります。すでに米国の長期金利は久方ぶりに1%台に乗ってきています。
このまま金利が上昇して、春先、あるいは年央までに2%台に接近する局面もあると思いますが、そうなると年後半には23年末まで金融緩和を継続するとしているFRBがスタンスを変えてくる可能性があります。その時、日米ともに当面の天井を付けるのではないかと思われますので、FRBの金融政策に要警戒です。
「年初の大雪」は政変につながる?
ですから21年は、マネーバブル相場の到来で、大きく利益を上げることができるチャンスはありますが、「引き際」が非常に大切になります。
私はこの年末年始に『天佑、我にあり』(上・下 海道龍一朗・著、講談社文庫)を読みました。本書は武田信玄と上杉謙信が相まみえ、両軍が大きな損害を出すなど熾烈な戦いとなった、第4次川中島の戦いを描いたものです。
上杉軍が「車懸かりの戦法」をとり、武田軍本陣の信玄めがけ謙信が切り込み、その太刀を信玄が軍配鉄扇で受けたとされるのが、この戦いです。
21年の相場は、この第4次川中島の戦いが参考になります。前半は上杉軍が圧勝、しかし妻女山に陣を張った上杉軍を裏側から突こうとした武田軍が、上杉軍の後方から戦場に到着して、武田軍が盛り返し、戦局が逆転したあたりで、上杉軍は退却するわけですが、謙信は武田軍が裏から来ることを見越して山を降り、手薄になった武田軍の本陣に切り込んだという図式です。
大事なのは、この退却のタイミングであり、今年最も問われる要素になります。ですから『財界』の読者の皆さんにはぜひ、『天佑、我にあり』、特に下巻をお読みいただきたいと思います。
21年に株価が急落する時があるとすれば、FRBの金融政策の変更と、もう一つは政変だと見ています。我々投資の世界にいる者は、経験法則、ジンクスに注意していますが、「年初の大雪」は過去の歴史から見て政変につながっています。例えば「二・二六事件」などは代表例です。
このジンクスを信ずるならば、例えば衆院解散、総選挙で自民・与党が大敗する、あるいは菅政権が短命に終わるといった政治的サプライズが起こり得ますが、こうしたネガティブサプライズで、株価は急落します。
日本だけでなく、米バイデン政権の足元も危うさがあります。1月20日の就任後、通常は100日間の「ハネムーン期間」があります。100日後は4月20日です。
1月に日米の株価が高値を付けて調整した後、4月、5月に高値を付けて終わる可能性もあります。
いずれにせよ、いつ「退却するか」が大事になります。しかし退却の時までは大きなチャンスがあるというのが、21年の相場となります。