2022-11-28

JFEが進める「脱炭素拠点」づくり 高炉跡地をどう再利用するか?

JFEスチール東日本製鉄所が立地する京浜地区の全景(川崎市提供)

歴史ある製鉄所が、その役割を終えようとしている。JFEスチール東日本製鉄所京浜地区は、前身の1社である旧日本鋼管が、首都圏で初めての一貫製鉄所を置いた場所。だが、近年は競争力に問題を抱え、2023年に高炉を休止することになった。問題は、その跡地をどう活用するか。JFEや地元の川崎市は、「脱炭素」の潮流を捉えた拠点としたい考えだが、そこに課題はないのか─。

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首都圏で初めての一貫製鉄所だったが…


 製鉄所跡地を新たな姿に生まれ変わらせることができるか─。

「当社の中に『京浜臨海土地活用検討班』ができて約2年が経過した。この間、川崎市を始めとする自治体、近隣エネルギー企業との連携検討を進めてきた」と話すのは、JFEホールディングス専務執行役員の岩山眞士氏。

 JFEスチールが、東日本製鉄所京浜地区(神奈川県川崎市)の高炉休止を含む構造改革を発表したのは、2020年3月27日のことだった。

 ここはJFEスチールの前身の1社である旧日本鋼管の主力製鉄所。1936年に稼働した首都圏で初めての一貫製鉄所だが、自動車用鋼板を製造する同社の西日本製鉄所と比較して、厚板や鋼管が中心で、様々なコストが高い京浜地区は競争力に課題を抱えていた。

 23年9月には高炉の稼働を休止、一貫製鉄所としての役割を終える。削減する粗鋼生産能力は年約400万㌧。これまで進めてきた固定費削減と合わせて、年間600億円程度の収益改善効果を見込んでいる。

 高炉での作業に携わっていた従業員約1200人は配置転換などで対応し、雇用は維持する方針。構造改革を発表した20年3月、JFEスチール社長の北野嘉久氏は「諸先輩や従業員にとって厳しい決断であり、私としても断腸の思い。強靭な企業体質にしていく」と話した。

 発表から約2年、この高炉跡地の活用方法について検討を進めてきたが、ここに来て一つの方向性が見えてきた。

 JFEが製鉄所を構える京浜地区は川崎市と横浜市にまたがる。最も大きいのは高炉がある扇島エリアで、土地利用転換を検討するエリアは実に222ヘクタール。

 それ以外にも南渡田、扇町、池上、水江の各エリアで開発が検討されており、合計で406ヘクタールにも及ぶ土地が開発される可能性がある。東京ドームで換算すると約85・5個分に相当する。

 メインエリアとも言える扇島地区では、最大利用者はJFEだが、それ以外に、東京電力グループ、JERA、ENEOS、東京ガス、出光興産、コスモ石油などのエネルギー企業が立地している。

 ただ、扇島地区の高炉周辺の土地利用転換を進める上では、様々な課題がある。第1に土地利用規制の問題。現在は都市計画法上の「工業専用地域」であり、都市計画法・港湾法上の「臨港地区工業港区」となっており、「端的に言って、製鉄所以外できない用途規制になっている」(岩山氏)。

 第2に交通アクセスの問題。今の扇島には「公道」がなく、島にアクセスしているのはJFEが整備した「私道」のみ。また、敷地内を首都高速湾岸線が通過している。インターチェンジを設置するという都市計画はあるが現時点では存在せず、国道357線の予定地はあるが整備に至っていない。

 第3に、設備の解体撤去、土壌対策、基盤整備の問題。高炉を含む、製鉄の上工程には巨大設備が数多く使われている。その設備の移設や撤去には、膨大な費用と時間がかかる。

 例えば、高炉や転炉に使われている杭だけを見ても、高炉は杭長が60メートルのものが8830本、転炉は杭長40メートルのものが9430本と大量に使われている。

 周辺設備の概算数量は、60から70万トンと見積もられている。これらの解体撤去、土壌対策、道路や上下水道などの基盤整備だけで「数千億円規模はかかる」(岩山氏)。これをJFE1社だけで賄うのは難しいと言わざるを得ない。

 仮に、そうした資金を賄うために、現在の土地を売却したとしても、製鉄所しかできない土地で、公道に接していないとなると、足元の土地価格はどうしても安くなってしまう。その意味で、利用するにせよ、売却するにせよ、土地を整備することは不可欠だということ。

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