2021-01-27

寒波で電力需給がひっ迫 電事連会長が異例の節電要請

写真はイメージ

「昨年末以降、全国的に厳しい寒さが続いており、例年に比べ電力需要が大幅に増加している。日常生活に支障のない範囲で、電気の効率的な使用にご協力いただきたい」と語るのは、大手電力会社で構成される電気事業連合会会長(九州電力社長)の池辺和弘氏。

 年明け以降、日本列島が厳しい寒さに覆われ、電力需給がひっ迫している。一時、関西電力では電力使用率が99%となるなど、各地で使用率が90%を超える状態が相次いでおり、大手電力会社が家庭や企業に節電を呼び掛ける事態となった。

 原因は寒波によって暖房の電力需要が大幅に増えたことに加え、曇りや雪が続き、太陽光発電の出力が低下。このため、電力各社は日頃、稼働していない旧式の火力発電所をフル稼働させるなどして、電力供給を何とか確保している形だ。

 ここで問題となっているのは、火力発電所の燃料となるLNG(液化天然ガス)の確保。LNGは電力需要の増減に対応しやすい反面、タンクで貯蔵しても徐々に気化してしまうため、石油や石炭に比べて長期保存に向かない。また、近年は中国や韓国などもLNG輸入を増加させており、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で国際的な物流網に遅れが出ている。

 日本は2050年に温室効果ガスの排出をゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言した。現在は具体的な道筋を決めるための議論が進んでおり、発電量の約50~60%を再生可能エネルギーで賄う方向で議論を進めていく方針。

 ただ、今回は天候不順による再エネの不安定さに加え、LNGに依存しすぎることのリスクも浮き彫りとなった。

 電力会社関係者からは「原子力発電所を再稼働させることができたら……」という声も聞かれるが、現状を考えれば原発の再稼働が容易でないことは明らかだ。

 脱炭素社会の実現に向け、再エネを増やすのは当然だが、安定供給という視点が欠けてはならない。関係者も「S(安全性)+3E(安定供給、経済効率性、環境への適合)が大事」と繰り返す。図らずも、寒波が日本の電力構造の脆弱性を突き付けている。

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