2021-01-25

大和証券グループ本社・中田誠司社長「SDGsなど社会課題解決に投資する商品づくりを」

なかた・せいじ
1960年7月東京都生まれ。83年早稲田大学政治経済学部卒業後、大和証券入社。2009年大和証券グループ本社取締役、16年副社長、17年4月社長に就任。

「リアルとデジタルの融合で、これまで100だったもの100以上にしていく」──中田氏はこう話す。コロナは対面営業を難しくしたが、オンラインツールも活用して営業を進める。また、従来進めてきた営業店舗改革も加速。さらには「SDGs」など社会課題に関心を持つ投資家も増えているという。コロナ禍を改革加速の契機にしようという考えだ。

メインはリアルでDXが補完する


 ── 2020年のコロナ禍は我々に様々な「気づき」を与えたかと思いますが、中田さんはどんなことを感じましたか。

 中田 新型コロナウイルスは、100年に1度、人類が迎えた感染症ですから、全くの想定外の事態です。まだ終息していませんから、あまり軽率なことは申し上げにくいですが、確かにコロナによって「気づき」があったのではないかと思います。

 当初は、東京オリンピック・パラリンピックの開催期間中にリモートワークに取り組む必要があり、これでいよいよ、リモートの波が日本に来るかと思っていたら、コロナという予想し得なかった事態によって、いろいろなものが前倒しで動かされました。

 また現在、世界の製薬メーカーがワクチン開発に必死に取り組んでいます。例えば1918年から猛威を振るった「スペイン風邪」は、人類が感染によって抗体を持ったことで終息したわけです。今は100年前にはなかったゲノム解析もあり、ワクチン開発も着実に進んでいると思いますから、いずれは「ウィズコロナ」から「ポストコロナ」に移っていくと思います。

 ポストコロナに移行した時に、ウィズコロナ時代に得た新しい働き方、ライフスタイルの中で、良いものは継続していくべきだと思います。

 ── 米大統領選はバイデン氏の勝利という形になりましたが、このことは世界経済にどう影響を与えると見ますか。

 中田 バイデン氏が大統領になっても、上下院のねじれ状況を考えると、大国・アメリカとしての大きな政策には、それほど大きな違いは出ないのではないかと見ています。

 今はアメリカだけでなく世界をコロナが襲っていますから、コロナ対策、経済対策が最優先です。誰が大統領でも、まずはそれをやらなければなりません。

 今は、アメリカだけではなく世界で「分断」が起き、貧富の格差も広がっています。これは「誰1人取り残さない」というSDGs(持続可能な開発目標)とは真逆の方向性です。アメリカの新大統領には分断から調和の政策を期待したいですね。

株価は「ポストコロナ」を見て動いている


 ── 20年の年末にかけて株価が高いですが、この要因をどう見ていますか。

 中田 株価は半年先、1年先を見て動いています。今回はコロナという100年に1度のイベントの発生を見て、もっと先を見ているような気がします。

 例えば日経平均株価の2万6000円台は29年ぶり(2020年11月)ですが、今年度の企業業績は大幅な減益です。一方、来年度はその反動で今年度対比では日経平均ベースで40%超の増益になるのではないかと私どもは見ています。

 そうなると、日経平均ベースの1株当たり利益が1650円程度になり、これにPER(株価収益率)16倍を掛けると2万6000円という数字が出てきます。

 この16倍をどう見るかですが、アベノミクスでは株価が7年間上昇し、リスクオン、リスクオフの時に12倍から18倍くらいのレンジで動いていました。平均すると15倍程度です。

 今、各国の政府・中央銀行が拡張的な財政金融政策に乗り出していますので、相当な過剰流動性が発生しているのも事実です。それを加味すればPER16倍程度を適用しても、そんなに無理はないと思います。

 2万6000円という株価自体は来年度の企業業績を見据えれば、不思議な株価ではありません。おそらく今の株式市場は、人類がコロナに打ち勝った後、1年半から2年先のポストコロナの状況を見据えて動いているのではないかと思います。

 ── 過剰流動性の発生には注意が必要だという声もありますね。

 中田 ええ。過剰流動性で思い起こされるのは1989年のバブル経済です。過剰流動性が一部、リスクマネーとしてマーケットに入って株価を押し上げている部分もあると思います。

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