2021-01-21

環境問題で化学メーカーの役割とは? 「CO2を原料転換するなど、2050年のカーボンニュートラルを目指しています」三井化学会長・淡輪敏氏

三井化学会長・淡輪敏氏

リサイクルしやすいプラスチックを開発

 ── 持続性のある社会構築へ向けての挑戦ということですね。高機能素材の開発を進めている三井化学会長の淡輪敏さん、化学業界におけるコロナ禍の影響はどうでしたか?

 淡輪 はい。2020年度はお客様の業種によって濃淡はありますが、4~6月期が一番影響を受けました。特に一番影響が出たのは自動車関連の事業で、自動車生産が激減したと聞いています。

 ただ、7月以降は回復軌道に乗り、中国は前年同期を上回ってきていますし、北米もそれに近い状態に戻りつつあります。ヨーロッパでの生産回復が遅れていますが、それ以上にASEANの出遅れが懸念されます。

 半導体は5G(高速通信規格)や新型スマートフォンなど全般的に好調で底堅い需要があります。その中で、われわれにとって特徴的だったのはこれまで安定していたメガネレンズモノマーや歯科材料が4~6月に落ち込んだことです。

 緊急事態宣言で眼鏡店が一時クローズドになったり、歯科医院に行く人が激減したことが原因と聞いています。コロナ禍は、リーマンショックとは違うインパクトがあるとしみじみ痛感しました。

 ── 三井化学は高付加価値事業を育成するなど、事業構造改革を進めてきましたが、その成果も出てきていますか?

 淡輪 はい。例えば、透明樹脂の『アペル』は光学特性などを含めて撮像レンズ分野では最も優れているとご好評をいただき、ナンバーワンのシェアになっています。われわれの想定以上のスピードでスマホのカメラの多眼化が進み、需要に追い付けない状況なので、現在必死に増産を進めています。

 それからICT分野ではアペルの他に、半導体のフォトマスクをクリーンに保つ『ペリクル』も引き合いが強いです。さらにフォトマスクの光源が高出力化しており、半導体の微細化に対応する「EUVペリクル」の設備を建設中です。

 自動車関係でも、ギアオイルの添加剤の『ルーカント』が好調です。市原工場の新プラントが完成し生産能力が倍増となりました。

 需要面では、21年は様々な分野で回復してくると期待していますが、足元の感染状況を見ると、楽観もできません。ただし、需要が戻ってきたときに的確に対応していけるよう、体制づくりを進めています。

 ── 最後に、廃プラ問題で日本の化学メーカーの果たす役割についてお願いします。

 淡輪 当社はプラスチックを供給する責任がありますので、供給側、いわゆる〝動脈系〟と、〝静脈系〟にあたる回収リサイクルのバランスが大事になります。特に静脈系で化学が果たす役割は、原料に戻す、もしくは製品のリサイクルをしやすいようなモノマテリアル化を図るなど、技術的に果たすべき役割は非常に大きいと思っています。

 また、環境問題についても、CO2をいかに減らすか、そしてCO2を原料転換することなどの2050年にカーボンニュートラルを目指した取組みを続けています。

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