2022-09-14

元防衛大臣・森本敏 ウクライナ戦争が極東に波及する要因(その3)

日・米・台が事前に準備すべきこととは?



 中国が台湾を統一することは中国共産党にとって「歴史的任務」である限り、それは必ず実行されると考えざるを得ない。

 ただ、中国としては、①武力行使をできる限り制約したい、②西側から本格的な経済制裁をうけることを回避したい、③ロシア・ウクライナ戦争のように兵員の損害が出ることを最小限にしたい、と考えることを推測すると、そこから出てくる回答は、①武力行使に至らない状態で行う作戦準備に十分な期間と手段をかける、②武力行使は短期決戦で決着させる、③そのためにはロシアと北朝鮮の協力を得て広範な陽動作戦を行い、日・米・台の戦力を分散し、中国は打撃力を一挙に集中させて勝利を狙い、台湾上陸を強行して台湾政権を転覆させる、ということに尽きるであろう。

 場合によっては、①西側諸国が経済制裁の措置をとる暇もない、②各国が台湾に十分な武器弾薬を送る暇もない、③台湾からの避難民退避や本格的な防御作戦は事前には可能であるが、戦闘が始まったら十分に実行できない、④しかし、日本の南西方面への弾道ミサイル攻撃や航空攻撃が集中的に行われ、この間、日本の北方方面で大規模な陽動作戦が中国・ロシア・北朝鮮の共同作戦という形で行われる。

 尖閣諸島には中国の海上民兵が大量に押し寄せるが、台湾統一の作戦のための陽動作戦として日米の防衛力をひきつける役割をすることもあり得る。こうした一連の活動を予測すると中国の第一段階作戦の準備活動はすでに始まっていると考えるべきである。

 こうしたシナリオが動くとすれば、日・米・台が事前に準備することはあまりに多い。

 ここでは詳細の指摘は控えるが、要は、①これは様相の異なる極東でのウクライナ戦争であり中国・ロシア・北朝鮮の連合軍と日・米・台の連合軍の総力戦になる、②ただ、短期決戦になるとすれば、事前の準備で勝敗が決まる、③日本は、台湾統一が実現した場合のあとのことを想定して準備を行う必要がある、④しかし、日本だけでシミュレーションしてもあまり意味はない。

 日本は米国と台湾の合同作戦の支援補助の役割を担う。特に、米国の行う活動をどのように支援できるかが重要となるのである。中国の準備活動は既に始まっている。

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