2021-01-20

日本航空・植木義晴会長「日本の航空会社は自分の足で立っていられる!」

── 航空業界は需要の蒸発で厳しい環境が続いています。

 植木 JALの約70年の歴史の中で事故や経営破綻も経験しましたが、業績面で過去最大の赤字を出すのは間違いのない事実です。私が社長だった6年間で高収益な財務体質と業務基盤の強化を目標に掲げてきましたが、4―6月までのキャッシュバーン(資金燃焼率)を見ると、その6年間の努力が6カ月でなくなりそうでした。

 世の無常を感じますよね。ただ今の世界の現状を見ると、国を代表する航空会社の大半は国からの支援を既に受けています。しかし、日本のJALとANAホールディングスは曲がりなりにも自分の足で立っていられると。捨てたもんじゃないなと。社員の努力にもう一度感謝をしたいと思っています。

 ── 21年は東京五輪の再開など明るい動きも出ます。

 植木 国内線は10月から始まったGo Toトラベルのお陰で、年末までに前年比70%まで行くと想定しています。年度末までには同
80%まで回復すると。

 実は日本の国内線市場は世界で4番目の大きさなのです。ですから、どこの国よりも早くこの国内線が復活の兆しを見せてくれたことは私たちにとっては非常にプラスです。22年度後半には、元通りとは言いませんが、ニューノーマルなレベルに達すると考えています。

 一方、国際線はコロナ拡大後、8カ月が経っても未だに前年同月比5%以上の需要が出たことはありません。全く動きがないので将来の予測ができない。24年度になってニューノーマルのレベルに達すると見ています。

 ── その間は内需で忍ぶと。

 植木 そうですね。そうすると、観光需要の比率が相対的に増えてきます。JALは高単価なプレミアム顧客に対してのフルサービスキャリアという点で強みがありましたので、今度はそうではないお客様が増えてくるわけです。ここを強化するために3社のLCC(格安航空会社)に投資もしていきます。

 ── 地方創生は日本全体の課題です。JALの果たす役割をどう考えていますか。

 植木 いかに地方に行っていただくかを考えるということで、当社の客室乗務員が地方の観光PRや人材育成などを担う「ふるさと応援隊」という取り組みを始めました。各都道府県に約20人、計1千人が1カ月当たり4割くらい、その地域で過ごし、観光資源の掘り起こしなどに取り組みます。

 これは慈善事業ではなく、必ず我々の事業に返ってくるものだと信じています。実際に手を挙げてくれた社員も、とても遣り甲斐を感じてくれています。

※インタビューは2020年11月14日に実施

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