2021-01-19

みずほ証券・飯田浩一社長「対面営業を担う 『人』の力の底上げにデジタルの力を」

飯田浩一・みずほ証券社長

いいだ・こういち
1962年10月東京都生まれ。86年慶應義塾大学経済学部卒業後、日本興業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)入行。2015年みずほ銀行執行役員、16年4月同常務取締役・みずほFG執行役常務、同年6月みずほFG取締役兼執行役常務、18年みずほ証券代表取締役社長に就任。

「『人』の付加価値の蓄積が、みずほ証券の付加価値」と強調する、みずほ証券社長の飯田浩一氏。同社は「営業を科学する」というコンセプトでIT、データを活用し、営業担当者を分析している。しかしこれは「人」の力を底上げするための取り組みで、「最後は人」というのが飯田氏の考え。銀行と証券の間にある垣根をどうするかという議論やIT企業の参入など時代が動く中、飯田氏のカジとりは。

コロナの中で顧客との信頼関係は?


 ─ コロナ禍は終息していませんが、日本、世界に大きな影響を与えた事象です。これまで、どう対応してきましたか。

 飯田 コロナが我々に何を突きつけているのかというと、より実質的、形ではなく中身のあるものが求められているということ、社会的距離を保ちながら、いかに本質的なコミュニケーションを取ることができるかだと考えました。

 そこで業務プロセス、コンテンツ、働き方や人事評価、お客様に対する対面と非対面のバランスなどを見直してきたのです。

 特にこの3年間で人事評価の改革を進めてきました。収益目標に対する達成率や契約件数ではなく、例えばコロナの中でお客様といかに信頼関係を結ぶ努力ができたか? といったことを問うています。これまで取り組んできたことは正しかったということを実感していますし、さらに掘り下げることができると考えています。

 ─ 危機的状況でしたが、自らを見つめ直す契機にすることができたと。

 飯田 ええ。ポストコロナを見据えた構造改革の深掘りを進めており、特に対顧客ビジネスの変革においては「人」とデジタルのハイブリッド、デジタライゼーション(デジタル活用によるビジネス変革)をどこまで前進させられるかが、ポストコロナのカギを握っています。

 我々のデジタルイノベーション戦略の中では、マーケティングでのAI(人工知能)やデータの活用、業務効率化に向けたロボティクスの活用を進めていますが、最後は「人」の力です。

「人」の付加価値の蓄積がみずほ証券の価値ですし、そのことでお客様に付加価値をお届けすることができる。ですから人の力を底上げするためにデータ、デジタルを活用しています。

デジタルの力で信頼される人間を分析


 ─ 特にリテール(個人向け営業)の分野で「営業を科学する」取り組みを進めてきていますが、現在の進捗は?

 飯田 リテールの対面営業を科学する時に、営業担当者がどういうアクションを起こせばいいのかというマーケティング面のアプローチと、1人ひとりの戦力を上げるためのHR(Human Resources)テック領域でのデジタル活用があります。

 HRでは、3000人近い営業担当者の行動の特徴、事前の準備、事後のコミュニケーション、お客様への提案内容、どういうバックボーン、知識を持った人物かといったデータをスコアリングしています。

 営業成績以上に、お客様に可愛がられて、信頼の絆が強い人間に着目しています。持って生まれたもの以外に、努力の積み重ねという面もあります。このハイパフォーマーを分析して、1人ひとりがそのギャップを埋めるためにどういう工夫をすればいいのかという土台づくりを進めているんです。

 ─ データを分析することで、見えてきたものがあると。

 飯田 ええ。かなり傾向値があることがわかってきました。現場でのオン・ザ・ジョブ・トレーニングだけでなく、その人の能力を開発し、さらにお客様に喜んでいただけるようになることを、会社としてデジタルを活用して応援する取り組みです。

 ─ 手応えはありますか。

 飯田 当初は夢物語かもしれないという思いもありましたが、今は夢ではなく、現実になってきています。対面の力をデジタルで支え、お客様との絆を強めていく。この取り組みは対面営業の土台になると考えています。

 ─ この取り組みの成果は実際に出てきていますか。

 飯田 これから本格的にフィードバックを始めますが、先程申し上げたマーケティングのツールなどによって営業効率は高まっています。

 また、コロナ禍での取り組みも生かせると考えています。緊急事態宣言下で在宅勤務が増えた際、社内に「例えば1日20件、お客様に電話をしてみては?」という提案をしました。そうして実際に取り組んだところ、まだ他社が動いていなかったようで、コロナで不安を抱えているお客様が「みずほ証券が最初に電話をくれた」と感じてくださり、信頼の絆が強まったのです。

 この経験をベースに電話、オンラインでのコンタクトを進めてきました。初めての状況下、当社の5年目以下の若手営業担当者が工夫しながら新規開拓をしたり、大口のお取引を獲得するといった実践ができたことは彼らの自信になったと思います。

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