2022-08-11

生命保険協会会長・稲垣精二氏に直撃!先行き不透明の中、生命保険会社が果たすべき役割は?

稲垣精二・生命保険協会長(第一生命保険社長)

「危機の時こそ、しっかりと役割を果たしていきたい」と生命保険協会長の稲垣氏は話す。2年半のコロナ禍で、保険金や給付金の支払いが増大。生命保険各社にとっても大変な事態だったが、負担は当面続く。また今後、「人生100年時代」にあって、寿命が資産寿命を越えてしまう恐れもある。時代の変化の中で生命保険会社の役割は。

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コロナで困った人、地域の下支えを


 ─ この2年半のコロナ禍もあり、改めて国民の中で安心・安全・健康への関心が高まっていますが、生命保険協会長として生保の役割をどう考えますか。

 稲垣 コロナ禍に関連した給付金のお支払いは、「みなし入院」などもあり非常に増加しています。コロナが始まって以降、5月末時点で、給付金はトータルで235万件、保険金・給付金合計で約3600億円をお支払いしています。

 やはり、こういう時こそ生命保険会社の出番ですから、感染された方々に対して一定程度の経済的サポートはできたのではないかと思っています。

 給付金は、金額自体はあまり大きくありませんが、第一生命個社でも件数は通常の倍くらいの規模で発生しており、各社お客様に寄り添うべく、懸命に対応を図っています。

 ─ 各社、コロナ禍でデジタル化を進めてきましたことで対応できたということもありますか。

 稲垣 私どもだけで見ても、通常の倍の件数をお支払いしていますから、以前の紙ベースのプロセスだったら回らなかったと思います。

 例えば第一生命では「簡易手続き」も行いましたし、My HER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム)の画像を、診断を証明する書類として取扱うことにも取り組みました。この2年ほど、各社知恵を絞ってデジタル化を進めてきたことで対応ができたと考えています。

 ─ 生保の加入者を始め、多くの人が生保の役割を再認識する局面でしたね。

 稲垣 例えばコロナの罹患により、非正規雇用の方々の中には収入が途絶えてしまう方々もおられましたから、こうした方々に対しては、お支払いによって一定程度下支えができたのではないかと思います。

 こうしたことも、我々生命保険会社の責務だと思いますから、危機の時こそしっかりと役割を果たせるように、今後の商品開発などにも生かしていきたいと思っています。

 ─ 危機の中でしたが、稲垣さんは社長として、何か嬉しかったことはありましたか。

 稲垣 第一生命は、2020年3月にコロナ感染が本格化した時に営業を停止したんです。やはり個人、法人問わず、お客様のところに訪問するのは好ましくないのではないかという考えからです。

 営業職員には給与補償をした上で、お客様のところに伺えない分、「何かお客様や地域に喜ばれることをやろう」という課題を社内に投げかけたんです。そうしたところ、全国それぞれの地域の課題に応じて、様々なことを考えてくれました。

 例えば、コロナで学校給食がなくなったために、農家で野菜が余ってしまった時に、我々が買い取らせていただいて、別のところに寄付させていただきましたし、営業ができなくなってしまった飲食店の方々に対し、オフィスの空きスペースをご提供し、お弁当の販売会を実施した事例もありました。

 元々、地域振興などには取り組んでいたのですが、コロナ禍で、それがかなりのレベルまで進んだのではないかという実感があります。これはやはり現場の力ですね。

 日頃お世話になっている地域で困っておられるお客様に貢献したいという気持ちを、みんなで行動に移してくれたことが嬉しかったですね。

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