2021-01-15

子供の歯を高齢者の骨の再生に ジーンテクノサイエンス・谷匡治が描く「新・再生医療」

歯髄幹細胞



 ただ、現状では、まだ課題も多い。一つは歯髄幹細胞製造の原料となる乳歯を集める方法。

 歯髄幹細胞は、組織の中にごく僅かしか含まれておらず、歯髄組織から微量の歯髄幹細胞のみを単離し、一定の培養条件下で増殖させる必要がある。このため、同社は東京大学医学部附属病院と提携。乳歯を提供してもいい子供に東大まで来てもらい、乳歯を集めるのだという。

 もう一つは財務体質。今期(2021年3月期)は、売上高9億円(前年同期比9・8%減)、16億円の営業赤字となる見通し。研究開発にかかる先行投資は避けられず、早期の黒字化が待たれるところだ。

「今は骨髄や脂肪組織由来の再生医療を研究しているところが多いが、歯に注目している企業は少ない。当社は大手が手を出さないニッチな分野に特化しており、治療法が不十分な疾患に対する医療を提供し、新領域を開拓したいと考えている。黒字化は2025年頃に達成可能と考えているが、22~25年度に前倒しで黒字化できるようにしたい」(谷氏)

 子供の頃、抜けた歯を床下や屋根に投げたりしたことのある人も多いのではないか。その捨てられていた歯が、骨折した高齢者の骨の再生を助けることができれば夢のある話である。難しい挑戦であることは事実だが、夢の実現に向けて、谷氏の挑戦はこれからも続く。

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