2021-01-15

子供の歯を高齢者の骨の再生に ジーンテクノサイエンス・谷匡治が描く「新・再生医療」

歯髄幹細胞

子供の頃、抜けた歯を床下や屋根に投げたりしたことのある人も多いのではないか。近年、骨折した高齢者の骨の再生を助ける可能性があるとして、捨てられていた歯に注目が集まっている。歯から得られる幹細胞に注目した再生医療の研究を行っているのが、ジーンテクノサイエンス。谷氏は「若くて、活性度が高い子供の歯の細胞を活用して新しい治療法をつくり出したい」と語る――。


難治性骨折の治療に役立てよう!

 

「幹細胞を活用した再生医療はいろいろな分野で研究が進んでいるが、ほとんどが大人の細胞を活用したもの。皆さん、子供の頃、かすり傷ができてもすぐに治ったものが、大人になると治りにくいという経験をした人も多いはず。子供の乳歯から得られる活性度が高い幹細胞を活用して、骨や神経の疾患に対して新しい治療法をつくり出したい」

 こう語るのは、東証マザーズ上場・ジーンテクノサイエンス社長の谷匡治氏。

 2001年に設立した同社。がんや免疫疾患など、治療法が不十分な疾患向けのバイオ新薬の研究開発に取り組む北海道大学発ベンチャーである。現在、同社が北海道大学などと共に共同研究しているのが、子供の乳歯に含まれる“歯髄(しずい)幹細胞”を活用して骨折した高齢者の骨の再生を助けようという新たな治療法だ。

 子供の歯(乳歯)は、子供の成長と共に自然と抜け、大人の歯(永久歯)に生え変わる。この乳歯の中には神経や骨を再生させる能力や炎症を抑える能力を発揮することが期待されている歯髄幹細胞がある。この細胞を活用して、治りにくいとされる“難治性骨折”の治療に役立てようという試みである。

 人は歳をとると徐々に筋力や骨密度が低下していく。特に高齢者は運動機能の衰えと共に転倒や骨折のリスクが増加するのだが、骨折の中でも10%くらいは難治性骨折に分類される。厚生労働省の調査によると、骨折・転倒は要介護になる原因の約12%(平成28年)を占めており、骨の再生を促す新しい治療法の開発が待たれる所以だ。

「歳をとると細胞もどんどん傷んでくるが、若いドナーの乳歯から採れる細胞は、高い組織再生・修復能力が期待されている。20本ある子供の歯は5~10歳くらいにかけて必ず抜けるので、リソースも豊富。採取するタイミングが多く、ドナーへの負担が少ない。歯髄幹細胞の適性疾患を見極めることで、低リスクで確実性の高い堅実な研究開発が可能と考えており、早く実用化につなげたい」(谷氏)

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