2022-06-02

「駅」を暮らしの拠点にする【JR東】がクリックやオフィスなどを展開

JR西国分寺駅のホーム上に設置されるクリニック

「駅」の姿が変わりつつある。JR東日本はJR中央線と武蔵野線が交差する西国分寺駅のホームに診療所を設置した。駅のホーム上にクリニックが開設されるのは日本初の試みとなる。

進む「JR東」の高輪再開発、鉄道による移動から街づくりへ

 クリニックは実際に医師が患者を目の前にして行う対面診療とオンラインブースで遠隔地にいる医師と行うオンライン診療のハイブリッド型だ。オンラインクリニックを開設することで複数科を設置できるため、総合的な診療も可能となる。

 このオンライン診療には、西国分寺駅周辺のクリニックの医師などが当たる予定だが、医師側にとってもメリットは大きい。「育児中の医師でも自由に勤務できるようになる」(社長の深澤祐二氏)からだ。働ける時間が限られた医師でも活躍できるため、医療業界が抱える「キャリアの断絶」の解決にもつながる。

 また、駅周辺の地域医療機関だけでなく、患者の症状に対応した高度な医療を受診できるようにするため、他の医療機関やJR東京総合病院といった基幹病院とも連携を図っていく。

 コロナ禍で人々の生活スタイルや働き方は変化し、医療機関への受診の需要が増える一方で、「就労時間と診療受付時間が合わない」「待ち時間が長い」といった理由から受診を諦めてしまう人がいるほか、感染不安から通院控えによる治療の中断など新たな悩みが生まれている。それに対し同社はハイブリッドクリニックで対応していく考え。

 また、同社は駅で個室型のシェアオフィスの展開も進めている。1人用から会議ができるスペースを備えたものまで、既に拠点数は500カ所を超える。中には西武ホールディングスのプリンスホテルの中や西武鉄道の駅にも展開。深澤氏は「できるだけ数を広げる」と強調する。

 他にも東京駅に「JR東日本カレッジ(仮称)」をプレ開校したり、ネット通販で購入した商品を駅の改札で受け取ることができるサービスを始めるなど、駅を「交通の拠点」からヒト・モノ・コト」がつながる「暮らしのプラットフォーム」に転換することを目指す。

 鉄道需要がコロナ前に戻らない中、通過する拠点に過ぎなかった駅が同社を支える屋台骨に成長するかもしれない。

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