2022-05-16

「行き過ぎた円安」に日本はどう対応?ソニーフィナンシャルグループチーフエコノミストの提言

菅野雅明・ソニーフィナンシャルグループチーフエコノミスト

「円安だけに頼って2%物価目標を実現しようとする姿勢を見直す必要がある」とソニーフィナンシャルグループチーフエコノミストの菅野雅明氏は指摘する。足元で為替の円安が進む。米国が利上げする一方で日本は金融緩和、指値オペで金利の維持を進めるなど、日米で政策が逆方向を向く。この結果、ドル高円安が続く。中長期的に見て、結局は日本企業の生産性向上という手立てが不可欠となる。

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金融政策を変えないと円安は止まらない


 ─ 足元で急速な円安が進んでいます。この要因をどう分析していますか。

 菅野 今回の円安の原因は日本と他の先進諸国との金融政策の違いがあります。米FRB(連邦準備制度理事会)を始め、欧州のECB(欧州中央銀行)、英国、カナダ、などが利上げを実施する中、日本銀行だけがこれまでの超金融緩和を継続しています。

 しかも、3月末、4月後半に連続して「指値オペ」(日銀が指定した利回りで無制限に国債を買い取る制度)を実施し、4―6月の長期及び超長期国債の買い入れ増額も併せて発表しています。これによって10年もの国債の金利0.25%を死守しようとしているわけです。

 ─ 今、政府・日銀が打つべき手をどう考えますか。

 菅野 内外金利差の拡大で円安の方向に行っていますが、この状況下で日銀の黒田東彦総裁、鈴木俊一財務大臣が「急激な為替変動は好ましくない」と言ったところで効果はありません。

 為替介入をしても、円安の進行ペースは遅くなるとは思いますが、円安トレンドを反転させるような力はありません。

 協調介入をやれば、もう少し効果はありますが、米国は今、インフレで困っていますからドル高はむしろ歓迎です。そういう時に米国が協調介入に応じる可能性は極めて低い。

 残るは日銀が金融政策を変えるか、米国が利上げを止めるかで、多くの関係者がそこに注目しています。ただ、米国の利上げはようやく始まったばかりで、少なくとも2023年の前半までは続きます。

 そうなると注目は日銀です。日銀が今の金融政策の枠組みを変えないと円安は止まらないと思います。

 なお、為替政策は政府、金融政策は日銀という役割分担となっていますが、実際には金融政策が為替動向に大きな影響を与えるような事態になっていますから、その点でも日銀の政策変更の有無が注目されるわけです。

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