2022-05-13

【金融庁】「金融行政DX」の実現へ、理系長官の手腕試される

新型コロナウイルス禍を奇貨として、金融庁が金融行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させている。

 昨年6月には金融機関からの法令上の申請や届け出をオンラインで可能にした他、今年4月には日銀との間で金融機関の経営状況のモニタリングに関わるデータなどを共有するシステムの運用も開始。「事務負担軽減につながっている」(地銀幹部)など金融機関からの評判も上々。

 政府は昨秋のデジタル庁発足を機に、行政のDX化推進に躍起だが、金融庁の場合、初の理系出身トップである長官の中島淳一氏が総括審議官時代(2018年7月~19年6月)から業務のデジタル化に力を注いできた「一日の長がある」(総合政策局幹部)ことが強み。

 中でも、金融機関の経営モニタリング情報について、日銀と共有するシステムができたのは「画期的」(局長級OB)。金融庁の検査と、日銀の考査への個別対応を強いられてきた金融機関側はかねて「二重行政で負担が重い」と不満を高めていたからだ。今年4月からは金融庁と日銀のシステムを巡るフォーマットが統一された結果、金融機関は経営状況などに関する資料を金融庁に送れば済むようになった。

 今後は2~3年後に予定するクラウドサービスを活用した金融庁の基幹システム刷新に合わせて、「総合政策局」「企画市場局」「監督局」の業務システムを完全統合。金融機関からの各種申請・届け出を受け付けるシステムとも接続し、将来的には日銀も含む官民があらゆるデータを共有できるオールジャパンの金融プラットフォームを構築するシナリオも描く。

 課題はIT人材のさらなる育成やサイバー攻撃にも耐えられるセキュリティ対策の高度化。世界トップクラスの金融行政DX実現に向けた仕込みをどこまで進められるか。理系長官のリーダーシップが試されそうだ。

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