2022-04-28

【のど薬・のど飴の「龍角散」】藤井隆太社長が語る”インバウンド激減の中での次の一手”

藤井隆太・龍角散社長

ふじい・りゅうた
1959年東京都生まれ。桐朋学園大学音楽学部を卒業後、同校研究科へ進学。研究科在学中にフランス・パリのエコール・ノルマル音楽院に留学、同校高等師範課程修了後、桐朋学園大学音楽学部研究科を修了。フルートを林りり子、小出信也、クリスチャン・ラルデに師事。小林製薬、三菱化成工業(現三菱ケミカル)を経て、94年龍角散入社。95年社長に就任。2013年から日本商工会議所社会保障専門委員として、厚生労働省社会保障審議会医療保険部会臨時委員を務める。

コロナ拡大前から着々と準備

 コロナ危機に加えてロシアによるウクライナ侵攻、さらには原材料高騰など企業経営を取り巻く環境は厳しさを増しています。中でもインバウンドビジネスに依存してきた業界は、かつてない危機に直面しています。

関西経済同友会代表幹事に直撃!関西はインバウンド、中国市場に頼った産業構造から脱却できるか?

 当社の「のど薬」や「のど飴」もインバウンド、特に訪日中国人のお客様には大変ご好評を得ています。ただ、コロナ前のインバウンド全盛期だけでなく、コロナ禍以降も中国向け販売が急速に伸びつつあるのです。

 実は当社は60年以上前から台湾・韓国・香港、米国への販売戦略を徹底的に講じてきましたが、中国現地での販売に関してはハードルが高く、あえて対応してきませんでした。中国で販売するためには工場の建設や技術移転を求められたからです。

 一方、香港や台湾では既に多くの家庭薬製品が正規販売されていたので、家庭薬業界として徹底的な共同販促活動を展開しました。香港では主に中国人観光客向けのチェーンストアーで、また、台湾では中国のアモイから船で30分の位置にありながら台湾領である金門島でも大きな実績を上げました。まだ日本ではインバウンドという言葉すら言われていなかった時です。

 状況が大きく変化したのは2010年。観光庁が「クールージャパン戦略」を講じる際、同庁からお声がかかりました。「日本ののど薬やのど飴は売れるのではないでしょうか」と。

 香港や台湾ではもちろん、日本でも沖縄や冬の北海道で中国人などのお客様に当社の商品が売れることはよく分かっていました。ですから、売れるであろうことは容易に想像できました。

 観光庁のご尽力もあり、日本の「OTC医薬品(薬局やドラッグストアなどで、自分で選んで買うことができる医薬品)」をTAXフリーで販売することができるようになり、ビザ発給時に現地で必ず訪れるであろう旅行代理店などに配布されるフリーペーパーや旅行雑誌などに家庭薬業界として共同広告を掲載したり、免税店などへの導線を確保するなど、様々な工夫を凝らしました。団体客が訪れるお店では製品を掲載したフリーペーパーを掲示し、陳列棚を家庭薬製品で埋めていただきました。その結果、店頭での販売もしっかり伸びました。

 やはり中国でのビジネスを進める上で重要なのは、売れるかどうか分からずに闇雲に進出するのではなく、まずは観光客として来日する方々に使っていただけるかどうかを確認する。その上で現地に進出するという段階を踏んだことが大きかったと思います。その結果、リスクを低減することができました。

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