2022-04-26

【前代未聞の鉄道ネットワーク】首都圏の7社14路線を1本でつなぐ 東急電鉄の沿線活性化策

乗り入れる鉄道会社の車両が勢ぞろい



「新綱島」「新横浜」で再開発

 冒頭の髙橋氏の発言にあるように、東急にとっては直通線の開業は“沿線が広がる”ことを意味する。そのため、既に同社は沿線開発にも手を着け始めている。その1つが新綱島だ。

 東急は新駅に直結する29階建ての高層タワーマンション(252戸)を開発。周辺に所在するマンション約3000物件のうち、20階建て以上の高さで駅から徒歩3分以内の物件数は1%に満たない。そのため同物件の希少性は高く、抽選倍率は最高で4倍。第1期の66戸はほぼ完売だ。しかも、平均坪単価は約400万円に上る。

 戦時中の駅名が「綱島温泉」だったように、かつての綱島は温泉街。東京の奥座敷として人気を博し、旅館だけでなくレジャーランドも造られて活況を呈したこともあった。1970年代に入ると商業・住宅エリアへと変わるのだが、今では街路が狭いなど、綱島駅と新綱島駅の間では「綱島駅東口駅前地区市街地再開発事業」をはじめとした再開発の機運が高まっている。


開業1年前という記念日に東急電鉄と相模鉄道のマスコットキャラクターも登場

 加えて今後の東急の出方が注目されるのが新横浜だ。高層ビルが建つ駅北口とは対照的に「篠原口」駅前はコンビニが1件ある程度の未開拓地。駐車場や住宅が主な場所であるため、エリアの土地所有者が中心となった再開発構想が動き出している。「新横浜駅南口駅前市街地再開発準備組合」が結成され、相鉄線の羽沢横浜国大駅前での再開発に携わる日鉄興和不動産と東急が協力企業に選ばれている。

 篠原口の風景は、かつての二子玉川の姿と重なる。狭い道路や老朽化した木造家屋が密集し、「交通インフラの整備もなかなか進まなかった」(担当者)。それが今では楽天グループが拠点を置くオフィス拠点にもなり、映画館やホテル、商業が周辺住民と共存する職住近接の街となっている。ニコタマ再開発の「ノウハウを篠原口でも生かせる」(前出の幹部)と考える。

 東急電鉄はポスト・コロナでも鉄道利用者はコロナ前には戻らないと捉える。そんな同社にとって直通線の開通はまたとないチャンス。ただ、新線開通時には多数の鉄道が乗り入れるため、運行障害が頻発することも予想されるだけに、直通線の開通を起爆剤にできるかどうかは東急の腕次第となる。

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