── 経済同友会代表幹事の櫻田謙悟さん、コロナ禍が日本及び世界経済に大きな打撃を与えました。どう総括しますか。
櫻田 世界経済という観点で言うと斑模様ですが、心配なのはヨーロッパで再度の落ち込みが来ないかということです。全世界の死亡率は4~5月に比べると、大きく下がってきていますから、厳しい状況を乗り越えた知恵が、それぞれの国あるいは社会で身に付き始めたのではないかなと思っています。
── 日本のポジションについてはどういう認識ですか。
櫻田 企業価値や経済規模は時価総額やGDPで測りますが、米国の上位5社の時価総額を足した金額が、どうして東証一部上場企業約2170社を合計した金額より大きいのか。このことを考えないまま、その現象だけを見て自信をなくしてはいけないというのが私の思いです。
というのも、トランプ米国大統領の自国第一主義のように、明らかにグローバル・キャピタリズムのダークサイドの方が目立ち始めたわけです。そんな中で、格差が前提のキャピタリズムを是正する方向に向かうとすると、新しい資本主義というのはマルチステークホルダーを意識した資本主義だろうと。
その場合に「成長」を「幸せ」に置き換えると、「万人の幸せ」、つまり特定の才能あるリッチな人たちが幸せになるのではなく、万人が幸せになる社会を目指すのだとすれば、日本はかなり良いところにいると思います。
日本がコロナの患者数や死亡者数が少ない理由が「ファクターX」と言われて、明らかになっていません。ですから、日本という国をもう一回見直して世界に打って出る。21年はその起点となる年にすべきです。
── 21年は同友会としてどんな活動をしていきますか。
櫻田 今の資本主義の課題解決には、マルチステークホルダーを巻き込み、どうやって課題を解決するかを考える舞台装置が必要です。そこで経済同友会では20年9月に「未来選択会議」を設置しました。
この会議の目的は未来を選択することです。会議にはアカデミアも政治も行政も、一般の市民や労働界も含めた国民が参加し、二つの基準でこの国の選択肢を考えます。
基準の一つは未来に軸足を置いた議論を行うこと。もう一つはエビデンスをベースにした議論です。前回の会議では、どうしたら若者が政治参画していくのか。そしてコロナで浮き彫りになった東京一極集中の課題に対し、なぜ分散化が進まないのかを議論しました。
── 未来を睨みながらの問題提起と言えますね。
櫻田 そうです。日本の将来について、複数の選択肢を政権に対して示していくことができれば、経済同友会らしい活動ができるのではないかと期待しています。