2020-12-29

東急・野本弘文会長が語る「人がオフィスに集まることの重要性」

── 東急グループは鉄道、流通、不動産、ホテルなどのインフラ事業を手掛けていますが、会長の野本弘文さんは20年をどう総括しますか。

 野本 私どものような公共交通事業者にとって、コロナ禍は非常に厳しい事象でした。東急グループは鉄道、ホテル、百貨店、映画館など、人が集まれば集まるほど成長する事業集団です。緊急事態宣言下で鉄道利用は前年比で最大7割ほど減りましたが、リモートワークの浸透もあって戻りがやや鈍く、現状も前年比で2~3割ほどの減という状況です。

 オフィス事業は、足元では渋谷で高収益のIT企業が入居していることなどもあり、堅調に推移しています。一部にリモートワークによって、オフィスを解約する、あるいは面積を減らすという声も聞かれましたが、私どものビルでは反対に1人当たりの専有面積を増やすことで、より快適なオフィスづくりを目指そうという企業も増えている印象です。

 また、多くの企業が、人と接することで新しいアイデアが生まれる「気づきの連鎖」の重要性を再認識されており、少しずつオフィスに戻りつつある現状と見ています。多くの人が集まり、その仕事の完成像を共有、共感していくことが重要で、在宅だけでは仕事の動線がつながらず、共感しきれないのではないかと思います。

 ── オフィスの重要性は変わらないと。

 野本 はい。ただ、働き方には今後「三つのあり方」があると考えています。本社機能のあるコアオフィス、ターミナル駅近くや自宅近くにあるサテライトオフィス、自宅、あるいは1人でスペースを持って働くスモールオフィスです。

 ── 改めて渋谷をどんな街にしていきますか。

 野本 コロナ禍を経ても基本は変わりません。私どもは「密」ではない、「集積」の大切さがあると考えています。また、共有スペースや広場など、より多くの空間に接することが、新たなアイデアの創出につながるという考え方です。

 東急グループでは、渋谷をIT企業が集積する中心部から、先端ファッションエリア、外国人も多く居住する住宅地へと「螺旋状」に発展させようと考えています。渋谷駅を中心に、周辺の代官山や原宿、表参道、青山などのエリアを遊歩道や商業エリア開発などでつなぐ「グレーター渋谷構想」もあり、渋谷を訪れた方々が快適に過ごし、周辺に流れていく仕組みを構築するためのまちづくりを引き続き推進していきます。

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